5/3新刊(予定)『Call My Name』 Ⅰ
白くふわふわとした毛並みを大きな手が撫でていくのをじっと見つめていた。
この世の慈しみを全部込めたんじゃないかとさえ思えるような優しい手つきに喉を鳴らす音が聞こえる。
急所と言える腹を差し出して甘える猫にうっすらと笑う声がした。
笑われたことに抗議したいのか、猫はちょいちょいと自身の手でやりかえし、それにまた笑い声が響く。
『ふふ……甘えんぼだね。君は本当に猫なのか、時々疑わしく思えるよ』
手の主は、実際は何も言葉は発していないけれど、そういう声が聞こえる気がする。かつて聞いた声。
「……」
五条はただひたすら、その動画を見続ける。
ほのぼのとした空気が漂う、なんともまったりとした動画だった。
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