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    凪子 nagiko_fsm

    戦国無双の左近と三成、無双OROCHIの伏犠が好きな片隅の物書き。
    さこみつ、みつさこ、ふっさこ でゆるっと書いてます。
    ある程度溜まったらピクシブにまとめます(過去作もこちら https://www.pixiv.net/users/2704531/novels

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    凪子 nagiko_fsm

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    さこみつミリパロ
    巡洋艦の副長の左近と、空母艦載機パイロットの三成(艦長の伏犠さんのおまけ)
    とりあえず導入部
    長く書けたらいいなとか思ってる
    一応海自の諸々をベースに書いてますが、階級とか艦隊編成とかは米軍とごっちゃ
    資料本は色々揃えたものの、都合よく変えてる部分もあるので、ミリパロといいつつファンタジーです

    さこみつミリパロ 最新鋭イージスシステム搭載のミサイル巡洋艦「建御名方」のCIC(戦闘情報センター)は、ピリピリとした緊張に包まれていた。

     今日の任務は、艤装が済んだばかりの新造空母「叢雲(ムラクモ)」を呉の海軍造船所から母港となる舞鶴基地まで護衛する任務だ。
     新造空母はこのあと慣熟訓練を行い、艦載機を載せて初めて空母としての役割を果たす。半年後には艦隊の主戦力となる空母でも、今は己の身を護るすべもない赤子同然だ。その大切な幼子を無事に舞鶴まで送り届けなくてはならない。
     参謀本部からの情報では敵の襲撃はまず無いとのことで、念の為に付けられた護衛はこの「建御名方(タケミナカタ)」とミサイル駆逐艦「夕月」「秋月」の合計三隻のみだ。

     欠伸が出るほど簡単な任務……となるはずだった。
     航路を半分も過ぎて日本海に出た頃だった。海軍一の索敵範囲を誇る建御名方のレーダーが機影を捉えたのは。
     途端に艦内が慌ただしくなる。
    「うちの参謀共は揃いも揃って無能ばかりときてる」
     CICの主である、射撃を統括する砲雷長兼副長の島左近海軍中佐は、対空レーダーを睨みながら苦々しげに吐き捨てた。
     ――敵の襲撃はまず無いって前情報は何だったんだ?
    「そう言うでない。誰にでも間違いはあろう」
     その後ろで足を組んで座っているのはこの艦の艦長、李伏犠海軍大佐だ。左近より三つ年上で、左近と同じ艦に乗り続けて十年目の信頼の置ける上官であり、プライベートでは親友と呼べる相手だ。
    「間違いで命かける羽目になるこっちの身にもなってほしいもんですよ」
     左近は首だけで後ろを振り返りながら呆れたように言う。
    「ぼやいても状況は変わらんよ。副長、報告を」
     伏犠はアンダーリムの伊達眼鏡を軽く押し上げて表情を引き締めると、左近に状況の説明を求めた。左近も軽口を控えてそれに答える。
    「レーダーが捉えた敵影は六。十時の方向です。対艦攻撃機と見て間違いないかと」
    「アウトレンジからの対艦ミサイル攻撃が二十四発か……建御名方のSM−2で迎撃可能じゃな?」
    「二十発までは同時迎撃が可能です。主砲もありますし、撃ち漏らしはないでしょう」
    「そうじゃろうな……」
     伏犠はインカムを着けた。
    「CIC艦橋、こちら艦長。航海長、艦を空母の左側面へ」
     インカムから復唱が聞こえて、艦の位置が動く。
     続けて僚艦に向かって回線を開く。
    「こちら建御名方。敵攻撃機をレーダー補足した。本艦が対空防衛に当たる。叢雲は進路そのまま。夕月は本艦の前方に秋月は後方に」
     イージス艦はその名の通り、味方艦の盾となるのが役目だ。
    「副長、念の為デコイのスタンバイを」
    「デコイ? そんなもの無くても……いえ、了解」
     左近はモニターに向き直った。デコイはミサイルのレーダー撹乱用の兵器だ。
     使わないで済む自信はあるが、秋月と夕月は対潜能力は高いものの対空防御は少々心許ない。それを考えると万が一撃ち漏らした時の被害が大きくなる。
    「前甲板VLS開放。砲術長、敵攻撃機のミサイル分離を確認後速やかに迎撃」
     左近が指示を出すと、砲術長以下ミサイル発射要員の手元が動く。
    「レーダーに感あり! 敵機、ミサイル分離。数二十四!」
    「一度に全弾だと!」
     左近は思わず声を上げていた。まずは半分、様子を見つつ距離を詰めてもう半分と考えていたが、どうやら一撃離脱の戦法をとるつもりらしい。
    「砲術長、SM-2発射。撃ち方初め! 続いて主砲の用意を! 射程に入ると同時に撃て!」
     主砲で少なくとも二発は落とせる。あとはデコイで誘導できれば……。
     発射されたミサイルがレーダーの中で対消滅していく。
    「残り四発……」
     速射に優れた主砲が放たれ、同時にデコイも発射する。これでなんとか……。
    「砲雷長、一発来ます!」
     敵とて兵器の技術開発は進めている。一発はデコイにも引っかからなかったらしい。
    「CIWS!」
     あとはもう近接兵器のバルカンで迎撃するしか無い。
     左近が射撃を指示しようとしたその時、唐突にレーダーに機影が現れた。おそらくミサイルが来るのとは逆の方向から、ごく低空で侵入してきたのだろう。イージス艦のレーダーは水上ギリギリの高さの感度は良くない。
     CIWSの射線上に躍り出てきたその機影から飛翔体が分離され、艦の五百メートル手前でミサイルと対消滅する。
    「味方機、か?」
    「噂の空軍のステルス機かのう? 極秘テストで実戦投入といったところか」
     呆然とする左近の後ろで伏犠がのんびりと答えた。
     ――空軍のステルス機だ? 識別信号も出さずに?
     左近は思わずオープンチャンネルでインカムに向かって叫んでいた。
    「そこの戦闘機、何やってんだ!」
     左近のあまりの剣幕にCICに沈黙が降りる。暫くして、同じくオープンチャンネルで返事が来た。
    『当然のことをしたまでだ。礼には及ばぬ』
     戦闘機は、若い男の声を一言を残して飛び去っていった。
     敵機はミサイルを分離した直後に離脱したようで、レーダーに映る周辺空域に敵勢力はない。
    「戦闘終了じゃな。こちら艦長、皆ご苦労だった。念の為、もうしばらくは対空警戒を厳とせよ」
     伏犠は指示を出して席を立つ。
    「左近、空軍にはわしから言っておくから気を静めよ。イライラは判断を鈍らせるぞ」
    「分かってます……すいません。後のことはお任せを」
     左近はインカムを外して大きく深呼吸して頭をかいた。


     丸一日かかった護衛任務はその後何事もなく終了し、建御名方はとんぼ返りで同じルートを帰路についていた。帰りの襲撃もゼロとはいえないが、確率は限りなく低い。
     夜も更けた艦長室のソファで、二人はノンアルコールビールを片手に向き合っていた。
    「昨日の戦闘機の件、空軍に言っておいたぞ」
    「なんて言ったんです?」
    「危なかったから以後気をつけてほしい、と」
    「あんたほんとに優しいですね。それで返事は?」
    「該当パイロットには厳重注意しておく、と」
    「どうだか?」
     左近は椅子にふんぞり返った。
     そんな左近の前に伏犠が一枚の書類を出す。それは、経歴書だった。
    「これは?」
    「ん? 知りたいじゃろうと思って。あのパイロット」
     伏犠は海軍だけでなく空軍にも陸軍にも友人が多く顔が利く。こんな資料を手に入れるのもお手の物だ。
    「石田三成、空軍中尉……へぇ、お人形さんみたいな顔ですね」
     いくら新型のステルス機とはいえ、あそこまで完全にレーダーに映らずに接近し、的確に迎撃するのはベテランパイロットでも難しい。それがまさか、こんなに若い士官だとは。
    「天才、ってやつですか?」
    「人一倍の努力家かもしれんよ?」
     伏犠はにやりと口の端を上げた。
    「それでこの中尉じゃがな、どうやら海軍に転属になるようなんじゃよ。海軍航空隊のパイロット不足は知っておろう?」
    「そのテストで今回の迎撃任務ってわけですかい?」
     左近は馬鹿にしたように手にしていた経歴書をテーブルに投げた。
    「はっ! 急いで空母なんか作るからパイロットの養成が間に合わないんでしょうが。ほんっとに、上層部ってのはバカしかいないんですかね⁉」
     伏犠さん、さっさと出世して偉くなってくださいよ。伏犠さんの命令なら安心して聞ける。
     左近に言われて伏犠は苦笑した。
    「皆が皆お主のように先が見える者ではない。お主こそ、統合参謀本部に転属願いでも出したらどうじゃ? 推薦状なら書いてやるぞ」
     今度は左近が苦笑する番だった。
    「俺は船乗りが性に合ってるんですよ。船を下ろされたら考えてみます」
     左近はもう一度書類に目を落とした。
    「石田三成……ね」
     次に顔を合わせることがあったら一発ぶん殴ってやろう。
     そう心に決めた左近は、まさかこれが一生を決める出会いになるなど思いもしなかった。

     

     任務から戻って陸に上がり、報告書を仕上げれば明日からは二日間の休暇だ。
     今夜は外に飲みに出よう。報告書を出しに行くついでに伏犠を誘おうと考えながら艦長の執務室に出向けば、伏犠は何やら大きな段ボール箱をいくつも組み立てているところだった。
    「大佐、報告書……って、何やってんです?」
    「ああ、左近か。いいところに来た」
    「転属、ですかい?」
     しかし建御名方に配属されたのは左近も伏犠も同じ、艦の就役と同じ半年前だ。たった半年での異動など、何かの不祥事があったとしか思えない。
    「伏犠さん、何かやらかしたんですか?」
     呆れたように左近が言うと、伏犠は子供のように頬を膨らませた。
    「何もやっとらんわ。帰ってきて基地司令に報告した途端にこれを渡されたんじゃ」
     伏犠はデスクの上の書類を手に取って左近に突き出した。
     左近はそれを受け取って素早く目を通して……、ガックリと肩を落とした。
    「これ、俺も一緒に異動じゃないですか……」
    「正式な辞令は午後じゃ。明日、明後日の休みで官舎の引っ越し準備をせねばならん」
     その書類に書かれていたのは、艦隊の再編計画だった。現在呉基地を母港としているミサイル巡洋艦「建御名方」だったが、就役したばかりの航空母艦「志那都(シナツ)」を中心とする第一艦隊の空母打撃群に配属されることになり、母港が横須賀基地に変わるのだ。
    「あと二日で引っ越し用意を済ませろって、上層部ってバカばっかなんですかね?」
    「……そうじゃな」
     伏犠は窓の外の青空に視線を投げた。
     艦隊再編の話は以前から聞いていた伏犠ではあるが、早くとも再来月辺りになるだろうと踏んでいた。どうやら先月変わった国防大臣が無茶を言ったらしい。そして、それに異議を申し立てられるほど気骨のある上層部ではない。
    「……バカばっかかもしれんなぁ」
     一応猶予は一週間あるが、引越し業者を手配して荷物をまとめて引き継ぎもしなくてはならないと思うと、ため息しか出てこない。
    「とりあえず、報告書置いときます。今夜飲みには……無理ですか」
    「嬉しい誘いじゃが、このザマではな」
     山と積まれたファイルをダンボールに投げ入れながら伏犠は苦笑する。
    「じゃ、次は横須賀の夜ですかね。手に負えなくなったら声かけてください。手伝いますよ」
    「ああ、頼む」
     左近はひらひらと手を振りながら部屋を後にした。


     一週間後。
     建御名方は無事横須賀基地に着任した。
     運用している隊員たちは、皆引っ越し疲れでげっそりとしている。伏犠と左近も例外ではない。
     基地司令への挨拶に向かう艦長の伏犠の後ろをついていきながら副長の左近はあくびを噛み殺した。
    「今夜は飲みにくり出すか?」
    「……官舎に荷物が来てるはずなんで……荷解きしないと」
    「……そうじゃったなぁ」
     この日の予定は特に無く、明日には艦隊の結成式が行われる。尉官以上の士官は全員出席だ。
    「あ、外に行くのは嫌ですけど、今夜伏犠さんとこ行ってもいいですか?」
     伏犠の部屋でなら、酔いつぶれてそのまま寝てしまっても問題ない。基地内の売店で酒と簡単なつまみを買って、伏犠の部屋でだらしなく寝転がりながらサブスクの映画でも見ようという算段だ。
    「よかろう。寝転がれるスペースは作っておく。っと、ここじゃな」
     基地司令室の前にたどり着いた二人は、眠そうな顔を引き締めた。


     伏犠と左近は旧知だった基地司令に簡単に着任の挨拶を済ませると、高級士官用の官舎に向かってトボトボと歩いていた。基地内は同じように今回の再編で異動してきた乗員達で慌ただしい。何人もの海軍士官とすれ違い、知った顔を見つけては軽く挨拶を交わす。
     そんな中で、左近は不意に違和感に気づいた。
     正面から歩いてきたのが黒の海軍の制服ではなく、紺の空軍の制服だったからだ。
     ――空軍士官がこんなところに一人でなんて、珍しい。
     すらりとした細身で、目深に被った正帽から赤茶の髪が覗いている。
     ――人形みたいだ。
     そう思った瞬間、左近の脳裏に一週間ほど前の記憶が蘇った。経歴書で見たあの写真。
    「あいつ……っ」
    「左近?」
     左近は走るような早足でつかつかと空軍士官に歩み寄っていた。
    「ちょっといいですかね?」
    「? 何の……御用ですか?」
     怪訝な顔を浮かべた彼は、左近の階級を確認して居住まいを正した。
    「石田三成中尉、で間違いないですか?」
    「はい。そちらは?」
    「ああ、自己紹介が遅れましたね。海軍中佐、島左近。ミサイル巡洋艦建御名方で副長兼砲雷長をやってます。こないだはどうも」
     そこまで左近が言うと、三成は軽く顔をしかめた。
    「心当たりがおありのようで?」
    「その件ならば、上を通じて謝罪は済んでいるはずですが」
     左近は木で鼻をくくったような三成の返事を鼻で笑い飛ばした。
    「あんた、自分がどれだけ危険なことをしてたか本当に理解してるんですか? 俺はもう少しでCIWSであんたの機体を撃ち落とすとこだったんですよ。俺に味方殺しの汚名を着せないでほしいんですがね」
     厭味ったらしい口調で左近が言うと、三成は目を大きく開いた。冷たいとさえ思える綺麗な顔が、十代の少年のような幼さを見せる。
    「……そこまで考えていなかった」
    「はぁ? 識別信号も出さすに、レーダーに引っかからない超低空で侵入して突然CIWSの射線上に機体をホップアップさせたのに、危険性に気づいてなかったっていうんですか?」
    「あの時は、一秒を争う状況で、ミサイルを迎撃することを最優先に……CIWSでは迎撃できても破片の被害は免れぬと……」
    「いや、まあ、そうなんですけど……。それであの返事だったってわけですか」
    『当然のことをしたまでだ。礼には及ばぬ』
     三成は本当に、味方艦を救いたいその一心で動いていただけなのだ。
     戸惑う三成の返答からは僅かの悪意も読み取れなくて、毒気を抜かれた左近はため息とともに首を垂れた。
    「あの時は助かりました。けど、もうあんな危ないことは止めてくださいよ。もっと周りを見る癖をつけてください」
    「……肝に銘じます」
     三成が神妙に頷いたところで、のんびり歩いてきた伏犠が追いついた。
    「話は終わったようじゃな。お主があの時のパイロットじゃったか。いい腕をしておる。ところで、どうしてここに?」
    「空軍より出向です。空母志那都の艦載機パイロットを拝命しました」
    「そうか。わしは李伏犠。建御名方の艦長じゃよ。志那都の直衛を務める。これからは顔を合わせる機会も多くなりそうじゃのう」
     伏犠は面白そうにガハハと笑い、左近は「まあ、よろしく」と苦笑し、三成はどう反応してよいか困った顔で二人の上官に敬礼で返した。 
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