魚と水前編 妖怪の寄り合いがお開きになったあと、わしは砂かけばばあに呼び止められた。彼女の肩に乗せてもらい、世間話をしながら帰途につく。
森でかたまって暮らす他のものたちと違い、わしは息子とともに「水木」という人間に世話になっている。
「お主、力を取り戻しておるのじゃろう?」
いよいよ人間の街との境に近付いてきた頃、彼女に言われたのだった。
◇ ◇ ◇
「遅くなったな。ただいま帰ったぞ」
家に入り声をかけるが、返事はない。
水木は縁側に座り、ぼうっと遠くを見ていた。その腕には鬼太郎を抱いている。時折頭を撫でたり、ぎゅっと抱き締めたりしている。
なにか深く考え込んでいるのか、わしが近付いても反応がない。最近、彼はこうしていることが増えた。
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