魔王に恋した勇者さん「『……ッハ、その程度なのか? 勇者というモノは』」
その姿はまさに“魔性„そのものだった。
初めて[[rb:魔王 > ヴィラン]]を演じている司くんを見たとき、とても衝撃を受けた。それは、雷に打たれたかのような、そんなふうに錯覚してしまうほどだった。
「………、『おい、気でも狂ったか?』」
司くんに顎を掴まれ、上を向かされる。
そうだ、ここは舞台の上で、今は練習中だ。僕は自分のセリフを忘れて、司くんに見惚れてしまっていたのだ。
「『いいや、必ず僕はあなたの目を覚ましてみせる。絶対に』」
遅れて、司くんのアドリブにつられるように、台本通りのセリフを言うと、司くんがフン、と鼻を鳴らして僕を嘲る。
「『口だけは達者だな。まあいいだろう。今回は見逃してやるが、次……オレの邪魔をしたら、今度こそ……』」
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