第1話まだ少し肌寒い4月
今日も子供達のリリー・ベリーを呼ぶ元気な声がエデンに木霊する。
『すずらん先生!!』
リリー「はいはい。今行くよ。」
花吐き病の罹患者リリー・ベリー
彼の通称はすずらん先生
最初彼にどうしてその名前で呼ばれてるのか聞いた時、《すずらんが好きだからだよ。》となんだか腑に落ちない答えを返されたことを思い出す。
ラフィ「今日も子供たちは元気だな…。」
中庭ですずらん先生と遊ぶ子供たちを眺めながら俺は、罹患者達の資料をまとめていた。
ラフィ「よしっこんなところかな…。」
しばらくして罹患者達の資料をまとめ終わり廊下に出る。
今日は何も無くて油断した。
「わっ!!」
ラフィ「わぁ!!?」
いきなり後ろから驚かされて思わず資料を落としそうになった
「ふっwあははっww」
こんなしょうもないイタズラをするのは一人しかいない。
振り向くと案の定想定の人物の姿がそこにはあった
ラフィ「すずらん先生…。」
リリー「はいはいwwすずらん先生ですよ。」
余程面白かったのか笑いを堪えきれずにプルプルとしながら受け答えしている
ラフィ「何の用ですか?」
リリー「ん?いやw特に何もないよ。たまたま居たから脅かしただけ〜」
ラフィ「なんなんだあんた…。はぁ…子供たちとは遊び終わったんですか?」
リリー「ん?うん。今は子供達はお昼寝中だよ。」
俺の目の前を歩くすずらん先生は楽しそうに答える
正直夢病の罹患者とは思えない。普通の人間…に見えるのにこの人も夢病の罹患者なんだよな…。
リリー「終焉君?どったの?」
少しだけぼーっとしていたから反応が遅れた。
こちらを心配してかじっとリリーが見つめていた。
ラフィ「あ、いや…なんでもないです。というか…その呼び方やめてください。」
リリー「えー……やだ。」
にやにやしながらやだって言うなよ…
子供っぽいリリーの顔を見てふと思い出したことを口にした。
ラフィ「あ、そういえば子供達で思い出したんですけど、すずらん先生がエデンのこと好きじゃないって言ってたって…」
リリー「あぁ…それね。勘違いしないで欲しいんだけど、子供達が嫌いなんじゃなくて、上層部が嫌いなだけなんだよね。」
上層部…エデンの管理者…いわゆるお偉いさんが嫌いなのか…この人。
ラフィ「どうしてですか?」
リリー「ん?いやだって…あいつら夢病患者の事見下してるし、それに《EDEN》エデンって1文字消して入れ替えると《END》エンドになるんだよ?僕達を閉じ込める為に作られた…鳥籠みたいなものさ。そんな施設の管理者なんて、ろくなものがいないだろ?嫌いなんだよねそういうの」
いつもより曇った瞳でそう語るすずらん先生は少しだけ恨みの籠った声をしていてちょっと怖くなった。
ラフィ「…ッ」
リリー「ってこんな話しても何も変わらないから意味無いんだけどね。例えエデンの犬である君でもね。」
あいつらが話聞くとは思えないし〜と俺に背を向けながら言う。
この人は…この人は怖い。
言い表せない不安を感じて思わず出た言葉は
ラフィ「あの!!…リリーさんは人を…殺したり…しないですよね?」
びっくりしてこっちを見るリリーを見て言わなければ良かったと後悔する。
リリー「……そうだね。人殺しは…嫌いだから」
そう言って…顔を背けられた。
しばらく沈黙して、リリーが口を開く
リリー「あ、そうだ。」
ラフィ「どうしたんですか?」
目の前のリリーが振り返ってふわっと微笑む
リリー「君が自分の本当の力に気づいたら、その時はちゃんと名前呼んであげるよ。」
ラフィ「え?それどう言ういm」
リリー「おっと、もうこんな時間!僕そろそろ部屋に戻らないと!じゃあお仕事頑張ってね。終焉君︎︎ᕷ」
聞く前にそそくさとリリーは部屋に戻って言ってしまった。
ラフィ「…俺の…本当の力??」
またも疑問を残したままリリーは俺を置いていったのだった。