Good luck 1 どうして、こんなことになっちゃったんだっけ?
聡明なはずのイデアの頭脳は今、機能を停止していた。
ベッドの上で、大好きな子が、自分の腕の中に収まっている。
いや、実際は、そんな風に甘く色めいた表現がゆるされる状況ではなかった。
イデアの左手はアズールの手首を掴み、右手はその肩を押さえ込んで、膝は細い腰を跨ぎ、その身体をベッドに縫い付けている。
皆が寝静まった、夜中の0時過ぎ。オクタヴィネル寮内のアズールの部屋で、イデアは、アズールを強引に押し倒し、その身体をベッドに組み敷いていた。
部屋の灯りは、窓から差し込む海水越しの、仄かな月明かりだけ。
ゆらゆらと頼りなく淡い光ではあったが、イデアからはアズールの姿が良く見えた。いつもかけている銀縁の眼鏡を、外しているせいもあるかもしれない。息を呑み、驚愕に瞳を見開きながら、こちらを見上げているアズールの表情が、はっきりと見えた。
4262