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    べつばら

    卍ばじふゆ

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    べつばら

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    ばじふゆ
    ※生存if同棲
    ※一緒にペットショップ経営中
    ※千冬の様子がおかしいベタ甘ラブ話

    解釈違いです 脱ぎ散らかした衣服、投げ捨てたかのようなバッグ、散らばった漫画や雑誌に書類なのかチラシなのかわからない紙━━。
     ソファーに座りそれらを見下ろしている場地は何度か知れないため息を吐いて、足下の床に転がって愛猫と戯れている千冬の小さな形の良い尻を軽く蹴った。
    「ぁだっ!…え?場地さん?なんスか?!抱っこ??」
    「殴られてぇのか」
     かまって欲しくてしたわけではない。何故か千冬は『場地さんは甘えたい時に殴ってくる』と思い込んでいる。まったくそんなことはないと言いたいのだが、口より先に手が出るのは事実なので否定しきれず、うやむやにしている。
    「テメェ何度言ったらわかんだ。散らかすんじゃねぇよ」
    「はい!すぐ片付けます!」
     慌ててかき集めてキレイにしようとしているが、服は丸めて一ヶ所にポンと置き、紙類はぐしゃぐしゃとバッグの中に入れてそのバッグを丸めた服の脇に寄せ、漫画と雑誌は積み重ねて壁際へとすべらせる雑さ加減はキレイに片付けたといえるのか疑問である。ゴミを放置するタイプではなく、脱いだら脱ぎっぱなし出したら出しっぱなしのひたすらだらしなく持ち物を散乱させるぱなしタイプなのでまあマシかと思えるが、いい加減に整理整頓くらいはできるようになってほしい。
     一緒に生活し始めて何度か注意しているが、一向に直らない。言われた直後は気にしてちゃんとするのだが、しばらくすると元に戻ってしまう。クセになってしまっているのだろうが、場地にはその光景が不愉快に映るので許容することはできなかった。
    「オマエ店はキレイにできんのに…」
    「それは、だって、仕事だし」
     なんとなく言いたいことはわかる。千冬は昔から公私混同をあまりしないように心掛けていたように思う。東卍だった頃は隊長と副隊長という立場、今は店長と店員という立場、そしてそれ以外の個人同士としての時間とをそれとなくわけている。家では気を張らずにのんびりと過ごして、恋人に甘えたり甘えられたりするのが好きなのだろう。自分が片付けてやれば良いのか、と思ったりもするが、それはなんだか尻に敷かれているようで癪にさわる。
     とにかくこの悪癖をどうにかしてやりたい。こうなったら最終手段を取るか、と場地は表情を引き締めた。
    「次やったら出てくからな」
    「どこに?!」
     どこって、どこだ?と自分の言葉に疑問符を浮かべてしまったが、引き下がるのも格好悪いので黙って凄んでみせる。千冬は場地の顔をじっと見ていたが、一瞬気まずそうに視線をそらしたあと、何故か強気な態度をみせてきた。
    「なら、どこにも行けないようにしますからね!」
    「ンだよそれ…俺のこと殺してお前も死ぬってか?」
    「俺はぜってぇ場地さん殺せないけど場地さんの目の前で死ぬことはできますからね!首カッ切って場地さんに血ぶっかけて死んでやる!」
    「死ぬな!」
     変な脅し方しやがって、と苛立ったが、千冬ならやりそうで背筋が寒くなる。なんでこいつこんなに思い詰めた異常者みたいになってんだ、と
    首をかしげたが、心当たりしかなく急に罪悪感が込み上げた。場地自身は今やブラックジョークのような笑い話にしてしまえるくらいの出来事と思っているのだが、千冬にとってはそうではないということは察している。
    「…出ていくなんてウソだ。なんかもういいワ。お前ができねぇことは俺がやるからお前はただ笑って生きてくれ」
    「え…?どうしたんスか、場地さん…」
    「泣かしてばっかでごめんな千冬ぅ」
    「やめてくださいよ場地さん!!」
     何故か青ざめた顔で見上げてくる千冬を困惑の表情で見下ろしていると、いきなり立ち上がった千冬は先ほど片付けたつもりの物に向かっていった。服を洗濯機の方へ持っていき、バッグの中から詰め込んだいろいろな紙を出して仕分けしてから恐らくポストインされていたのだろうスーパーのチラシだけをテーブルに残し他は自分の部屋にバッグと共に持っていって、漫画も雑誌も本棚に戻してから、別にやれとも言っていない掃除機かけまで始めた。
    「場地さん!キレイになりました?合格っスか?!」
    「…おう。いや、別にそこまでやれって言ってねェ…」
     褒められ待ちみたいな顔で見つめてくる千冬は可愛らしいが、なにがどうなったんだと戸惑ってしまう。時々よくわからない行動をし出す千冬に、場地はただただ圧倒されてしまってその理由も原因も問い質すことなく流してしまっていた。どうせ何か面倒なことだろうと思う。あまり巻き込まれたくはないのでそっとしておきたいのだが、今後もしも大事件に発展するようなことになったら恐ろしいのでやはりはっきりさせておこうと、千冬が落ち着いた頃合いを見計らって頭を撫でてやりながら尋ねた。
    「お前さぁ、なんか俺に気ぃ遣いすぎってか、なんていうか…大丈夫か?」
     どう切り出せば良いのかわからず、要領を得ない話し方になってしまったが、千冬はきちんと汲み取ったようで、一瞬だけ困ったような、泣きそうな表情をみせたあと、すっと真顔になって凛とした声音で言い切った。
    「場地さんが負い目を感じるとかそういうの、本当に嫌なんです」
     その真剣な眼差しに気圧され何も言えずにただ千冬を見つめる。昔から崇拝に似た扱いをされていたが、ここまで拗らせているとは思わなかった。
    「いや、俺だって人間だし、弱音吐いたり落ち込んだりもする…」
    「弱音とかは全然良いんですよ!落ち込んだって俺がいるから大丈夫です!!」
     被せるように声を張り上げる千冬の主張がさっぱりわからず、場地は口を開けたままフリーズしてしまった。俺がいるから大丈夫ってなんだ、とその自信に満ち溢れた目を見ながら思ったが、口にしてしまうのは拗れそうなのでやめておく。場地はバカで通っているが、勘は鋭い。触れてはいけないところはうまく避けて話を進める。
    「弱音と負い目って同じようなもんだろ」
    「ぜんっぜん違います!!場地さんは悪くねぇんで大丈夫です!!」
     だからさっきから何が大丈夫なのか。混乱してきた場地はもう面倒くさいので放棄してしまおうと頷いて話を終わらせようとしたが、ヒートアップしたらしい千冬は勝手に思いの丈をぶちまけてくる。
    「場地さんが他人のせいで負の感情を抱くなんてあり得ない!場地さんにそんなもん負わせて良いのは場地さんだけッスよ!!」
     まるで何を言っているのかわからなすぎて、逆に感心してしまう。とにかく千冬は場地のことが大好きで暴走していることはわかるので、とりあえず落ち着かせようと抱き上げて膝に乗せ、顎を掴んでやや強引にキスをした。
    「腹減ったな」
     惚けてこちらをじっと見つめている千冬にそう言うと、突然スイッチがオンになったように動き出す。
    「場地さん、今日は肉が安いですよ!」
     先ほど残したスーパーのチラシをさっと取って該当箇所を指差す千冬の頭を撫でまわし、場地は何事もなかったようにすっと日常に戻して立ち上がった。
    「千冬ぅ、買い物行くぞ」
    「はい!」
     ついてくる千冬の可愛らしい笑顔につられてニコリと笑った場地は、千冬の自分に対する大きくて重い感情はもう何も気にしないことにした。
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