リーマン×OLザーザー雨が降り注ぐ金曜日の午後7時。
仕事帰りのサラリーマンや授業が終わりの自由になった学生達が賑わう都会の駅の1つ。
その駅の改札口前で定時を過ぎても帰らない男を事を待つ女性が1人。
それは今朝のこと。その日フミは虫の居所が悪く小さな事にイラついて長尾に当たってしまっていた。
「もういいです。長尾さんなんてどっか行ってください!帰ってこなくていいですよ」
「そうすか、分かりました。…じゃあ仕事行ってきますね。ゆうめしは要らないですよ」パタンッ
「…え?」
何時もはそんなフミをすぐ様宥める長尾だったが今回は少し違っていた。
「(…いや、かえってこなくていいは流石に言い過ぎたか?いやでもこんなの何時もの軽口だし……いやでも…あんな態度初め…て…………んんっ…?)」
「…だ、大丈夫だよ、いつも通り帰りにアイスかって帰ってきてくれる…し」
フミは時折仕事や将来の事で不安になるとつい長尾に甘えてしまい当たりが強くなる事が多々あった。
その度に少し困った笑顔であるがフミを抱きしめ『帰りにアイス買ってきますよ何がいいですか?』と宥めてくれる。それがお決まりの展開なはず……だった。
いつも仕事は定時で終え、上司からの誘いにも彼女が家で待ってるんでと話に乗らない、コンビニ位しか寄るところがない長尾がいつもの時間に帰ってこない。何の連絡も無しに。
「(…まさか本当に帰ってこないなんて事ないよね?)」
1時間、2時間経っても家に帰ってこない。
「(……本当にずっと帰ってこなかったらどうしよう…)」
フミは不安でいてもたってもいられず、最寄りの駅に走る。
辺りを見渡しても勿論長尾はいない。次第に雨が降り、気付けば土砂降りに。
「(うそ、雨なんて朝の天気予報では言ってなかったじゃん)」
びしょ濡れになりながら身を縮め、長尾の帰りを待つフミ。
………いくら待っただろう。
終電間際、夕暮れだった空はあっという間に真っ暗に。いつの間にか雨はすっかり上がり身体は冷えきって感覚がない。
「(……ほんとう…かえって……こないかも………)」グスンッ
「(もう駄目だ、身体の感覚も、頭もなくなってきた……)」
最終電車から1人、疲れた顔のサラリーマンが降りてくる。
「(ったく…付き合いでもやっぱり酒はしんどいな…はぁ…。…今朝あんな形で出ていってしまったけどフミ様は落ち着いただろうか…)」
夕暮れには賑わってた駅のホームにはこの時間には人1人いない…はずだった。
改札口の向こう、よく待ち合わせで使われる時計台の下にびしょ濡れで縮こまっている女性が1人。
「(こんな時間に1人で大丈夫か?しかもびしょ濡れだ……し…………………………え?)」
直ぐにびしょ濡れで寒そうに震え丸まってる女性がフミだと気付き、慌てて駆け寄っていく
「フミ様!?何やってるんですか!?びしょ濡れだし!こんな時間だし!傘はどうしたんですk「長尾さんが」
「…え?」
「長尾さんが帰ってこないから……朝…あんな事言ったから…………本当に帰ってこなかったらって!!……だから…我………グス…」
「フミ様………帰ってこない訳ないじゃないですか。俺はずっとフミ様の物ですよ」
安心させる様に、体を温めるようにギュッとフミを抱き締める。
「帰りましょ…俺達の家に」
「……………ぅん」
「帰ったらお風呂入りましょ、風邪引いちゃいますよ」
「…っしょがぃ…」
「え?」
「……お風呂……一緒がいい」
小さな声で甘えた声で長尾を小さく抱き締めながらフミは呟く。
「っ!…はい、一緒に入りましょう」
抱きしめてたフミのおでこに コツンッ とおでこを合わせ笑顔で約束する。
チャポン
「…長尾さん、なんで帰りが遅かったんですか?」
「会社の飲み会ですよ、取引先のお偉いさんと」
「……ふーん」
「お?疑ってんな?本当ですよ。それといい加減フミ様の事甘やかしすぎかな〜って思ってぇ?いっつも俺が謝ってフミ様の好きなアイスクリーム買ってきてってそんな感じだったじゃないですか?今回は余りにも理由がぁ?理不尽だったんで〜」
「っ!?別にそんなんじゃないです…」
「俺に甘やかされてる自覚…ありますよね?」
「う”ぅ…長尾さんが悪いで「フミ様?」」
「……ゴメンナサイ」
「はははっ冗談ですよ、俺も心配させて、あんな姿でびしょ濡れになるで待たせてごめんなさい」ぎゅ
「………今日だけは許しますよ」