春の訪れはロウソクと共に 白い箱を持って病室を訪ねる。春の気配がすぐそこまでやってきている、春の嵐のように強い風が吹きつける日だった。
病室は相も変わらず静かなままで、その部屋の主は今日も静かにベッドの上で体を起こして外を眺めている。
いつもはひとりで来るところを、病室の主、楽が誕生日だというのでひかりを伴って西華は扉を開けた。
「お邪魔します。元気にしてた?」
「ういーす、チーフ、元気にしてたっすか? って聞いても返事は来ないんすけどね」
「こら、西華。そういうこと言わないの、聞こえてるかもしれないでしょ?」
「聞こえてても聞こえてなくてもコイツの場合は変わらんでしょう」
「そーれーでーも。だめだよ」
ひかりに諭され、西華はバツの悪そうな顔を見せた。零課の紅一点に基本的にメンバーは逆らえないのだ。
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