スパークラー 真夏のピークが去りかけていた、とある日のこと。
帰路に着くべく学院の廊下をひとり歩いていたら、突然背後から「花火をやらないか」と声をかけられた。振り返ったら朔間さんがいた。その手に手持ち花火のセットを抱えて。
「てか、アンタそれどこで買ったの」
「近くのコンビニじゃけど」
「……朔間零もコンビニ行くんだ」
そんなわけで俺はいま、学院の屋上でむさくるしい男と二人、なぜか花火をする羽目になっている。火のついた蝋燭を屋上の真ん中に置いた朔間さんが、花火の袋を喜々として開けた。
「さて、どれからやろうかのう」
「好きなのからやれば」
「それがイマイチ種類が分からんのじゃよ」
まるで正解を探すように、もぞもぞと花火を吟味する姿がまどろっこしい。手持ち花火なんて適当に選んで火をつけるだけでいいのに。
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