『昔、「白い息(英語)」という流行歌があった』 耳触りのいいその声が、好きだと思った。
顔が似ていると声まで似てくるのだろうか?薄井が想いを寄せる上官とモブ男はどことなく面立ちが似ており、それだけでも薄井にとってモブ男は上官とはまた別に気になる存在だったが、初めてその声を聞いたときの第一印象が冒頭の一文である。
「モブにしておくには勿体ない好い声ッスねぇ、ハァハァ……もっと側で聴かせてほしいッス」
まだ吐く息も白い冬の折。その吐息が顔にかかるほどの至近距離で間合いを詰めてくる薄井に、モブ男は恐怖心を覚える。
「雪が吹雪く山小屋でモブ男クンとふたり……という妄想に憧れるっス。
その状況なら本音を四の五の追求しなくても野生に戻って交われるっスからねぇ。
ましてなんも持たずに歩くボクだからモブ男クンの肉布団で暖めさせてほしいっスし、カワイイ鳴き声も聞かせてほしいっスねぇ」
微妙に某歌の詞を混ぜた怪文書まがいのきわどいフレーズで自身の秘めた欲望をモブ男の耳元に囁く薄井。しかも、元歌の詞にはなかった「野生に戻って」「肉布団で」「カワイイ鳴き声」なんて独自のワードまで付け加えている。
その歌が流行ったのはもう随分昔の話だから、若いモブ男には意味がわからなかったというかわかりたくなかったが、薄井が何かとてつもなく恐ろしいことを言っているのは本能的に理解できたのであった。
(薄井も若造だろう?「自分はカーチャンの影響で覚えたっス」)
<了>
歌詞の元ネタはT.M.Revolutionの「WHITE BREATH」です。
この歌を聴いてたら、「交われるでしょう」とか「暖めさせて」のところでこれらの台詞を吐きながらターゲットに迫る薄井が浮かんだのでネタに転用しました!
薄井の怪文書内での主語は、歌詞に寄せて「自分」でなく「ボク」にしています。(歌詞では正確には「僕」表記。私の自己満こだわりでここでは敢えてカタカナ表記の「ボク」を採用)
歌詞全文はこちら。https://www.oricon.co.jp/prof/23469/lyrics/I012220/
TMファンなら「山小屋」は「ロッジ」と読むよね!