焼き餅は狐色 橙色と茜色の入った、やたら縞の浴衣に栗色の帯を合わせて身を包み、角を生やした顰(しかみ)の面を斜めに着けたミスタに、シュウとニナは鬼気迫る勢いで何度目かの注意事項を言い含めた。
『ほんとに不本意だけど、ヴォックスから離れないで。絶対だよ』
ニナやシュウが心配している理由は、此れから向かう場所のせいだ。
夏になってファンアートや、ネットに散らばる日本の『夏祭り』を見てみたいなぁ。と呟いた俺を、「そうかそうか」と何故か嬉しそうにヴォックスが応じて、人外の夏祭りに行く事が決まった。
二人はそれを何処からか知って、文字通り『駆け付け』てくれたのだ。
「心配せずともミスタの側から離れる気は無い」
怖いくらい上機嫌のヴォックスが、優雅で自然に俺の腰に手を回しながら二人に微笑む。
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