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    アマリリス

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    アマリリス

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    レム主 ノマエン後成立までの話

    ##gn二次創作
    ##レム主

    例外処理 ループを抜け出したあの日から数日が経つ。空間転移をしても誰も消えることのない、穏やかな日常にも多少慣れてきた。ただ一つ──セツがいないことを除けば。

    『……そんな顔、しないで。ユーリが本当に会いたい人なら……きっとまた、会えるから』
    『カーテンコールは、あるのかしらね』

     あの別れは堪えたが、ジナと夕里子の言葉が前を向かせてくれた。
     そうだ、絶対に会いに行く。この宇宙で自分しか覚えていなくても、確かにセツはいたのだから。会って、言いそびれていたことを全部伝えなければ気が済まない。
     そのために、自分がすべきことは……。

    ***

    「帰りなよ」

     ラキオがちらりとも目を向けず言い放った。
     ……予想通りの反応だ。いつかのループでもこんなことがあった、とつい苦笑した。

    「……なんだい、気持ち悪い顔をして」

     心底怪訝そうな顔をしたラキオがこちらを向いてくれた。チャンスだ!
     どうしてもラキオの協力が必要だから、話だけでも聞いてほしい、と頭を下げた。

    「フン、その軽い頭に何の価値があるのやら。いいかい、君と違って僕は忙しいンだ。頼み事をしたいのなら、僕にとってメリットになる交渉材料の一つでも用意してくるべきだとは思わない?」

     材料ならある、と胸を張って答えた。
     ピクリとラキオの眉が動き、目を見開く。

    「……へえ? そこまで言うなら聞いてあげるよ。君の材料とやらは、なんなのか」

     
     
    ***

    「あのっ!」

     自室に戻ろうとしていた時、大きな声で呼び止められた。
     ……レムナンだ。どうしたのだろう?
     思えば、ループを抜けてからは不思議と彼に話しかけられることが増えた気がする。

    「……あ、あの、ユーリ、さん」

     ……?

    「あの……ぼ、僕……」

     ……。…………。
     黙ってレムナンの言葉を待つ。

    「僕……は……」

     しばらく待っても、続く言葉が出てこない。
     徐々にレムナンの顔が俯きがちになる。
     ……レムナンは内気なところこそあるが、自分から行動する時は意外とアグレッシブな方だ。その彼がこんなに口ごもるとは、それだけ緊張している……ということだろうか?
     思い切って、何かあったの? と尋ねた。

    「あ……す、すいません!」

     レムナンは慌てて顔を上げると、視線をあちこちに彷徨わせた。

    「僕……ユーリさん、に……き、聞きたいことが、あって……」

     聞きたいこと? と続きを促した。

    「……はい。でも、その……他の方には、聞かれたくない、ので……よければ、ぼ、僕の部屋、に……来てもらえませんか?」

     なるほど。女性が苦手なレムナンが緊張していた理由がわかった気がした。
     グノーシア騒ぎが無くLeviさえ万全なら、D.Q.Oの個室は安全のはずだが……レムナンにとっては、それでも不安を覚える環境なのだろう。
     自分はもちろん構わない、と承諾した。

    「あ……ありがとう、ございます……!」

     レムナンの表情がやっと緩んだ。安心したように微笑んでいる。
     レムナンに先導され、部屋の扉をくぐった。

    「よければ、座ってください」


    ***

    「好き、です」

     吐き出す言葉に合わせて、レムナンが自分の右袖を引いた。
     ……好き? 誰が、誰を……?

    「……あ、あの。すいません、好き、なんです」



    「……ラキオさんから、聞きました。ユーリさんが、あの人について教えてくださったって」



    「ラキオさん、僕がユーリさんのことを質問したら……ユーリさんの話を録音した音声を、僕に聞かせてくれたんです」

     ……。……確かに、録音した音声を聞かせないでほしい、とは言わなかった気がする……。
     非常に不本意だが、ラキオ相手に注意が足りなかったのは否めない。それでレムナンは知ってしまったのか……。

    「驚き、ました。……ループとか、並行宇宙とか……僕には、わからない話ばかりで。それに……そんなことを知っているユーリさんを、怖い、とも思いました」

     怖い。……理解はしていたが、正面から言われるとなかなか堪えるものがある。
     しかし、それならどうして好きだなんて言ってくれたのか、と尋ねた。
     未知の宇宙を知る自分など、彼にとっては恐怖の対象にしかならないだろうに……。

    「どうして……ですか。それは……その」

     レムナンが赤面して言葉を詰まらせる。
     そうだ。恐れられ、遠ざけられることは覚悟していた。この反応だけが不思議なのだ。
     得体の知れない話をする自分に、彼はなぜ好意を抱いてくれたのか……。

    「……そ、そこだけじゃないんです。ラキオさんに、聞かせてもらったのは……」

     ……………………。そこだけじゃない、とは?
     額に冷や汗を浮かべながら、自分の話した内容を必死に思い起こす。正確には、内容というよりその順序を。どこまでなら彼に聞かれてもよい話だったのかを。
     そして、途中でそんなことが無意味だと悟ってしまったため……考えるのをやめた。
     ……どこまで? と、単刀直入に質問する。

    「あの、この後も……おそらく全部……です」



    「……僕のために、ラキオさんに、あの人の調査を頼んでくださって。僕のことを……す、好きだって、言ってくれて。……そして、それを全部、僕には黙っていてくれて」



    「……ユーリさんに距離を置かれているのは、気付いていました。でも、こんな理由があるだなんて、まったく思っていなかったんです」



    「それで……こんなにも僕のことを想ってくれる人がいるんだって思ったら、僕……ユーリさんのことばかり、考えてしまうんです」



    「ユーリさんが良い方なのは、これまでお話した中でも感じていましたから。だから……」



    「……好き、です」
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