ピグマリオンの瞳 帝国の辺境、古い教会の地下墳墓(カタコンベ)にそれはいる。
「これは驚きました。まるで剥製のようですね」
虚ろな目をした髑髏がぎっしりと見つめるドームの中央に安置された棺には、美しいドールが一体。
白磁のなめらかな肌、形よく結ばれたくちびる、紫の髪は豊かに艶やかに編まれてさがっている。
「この記録によると宗という人形師が、ここができた時に納めて、その後弟子たちが代々メンテナンスをしてきたらしいのですが」
それもいつしか絶え果てて、神父として着任したばかりの巽が、記録を元に降り立つまで永い眠りについていた。
「綺麗な方ですね、どなたかを模したものでしょうか」
触れたいと願う手を阻むガラスの蓋。開けると砂に成り果てそうな儚さがある。
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