静かにガラスの扉を開けて中に入り、ベッドの横にある白いサイドテーブルに、スープとコーヒーの乗ったトレーをそっと置き、閉じていたカーテンを開く。
「浮奇、」
と声をかけ、紫色の柔らかな髪を撫でるが起きる気配はない。
数年に一度、月と惑星、星が何らかの条件を満たした日、星から授かり、灯った光の副作用とでも言うように、彼は星と1つになり、眠り続けるのだ。
宛ら小さい天文台のような部屋はその影響だろうか、明かりをつけずとも不思議な白い光と暖かさで満たされており、時折どこからともなく、パチパチ、しゃら、と何かが弾けたり擦れるような音が聴こえてくる。
小さく艶やかな唇から伝わる浅い呼吸と華奢な手首から伝わる仄かな熱が、そこにまだ存在し続けている証として残っているのだった。
1898