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    ぽうはっちゃ

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    ぽうはっちゃ

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    まーめいどパロ
    🔮🐑
    ハッピーエンド
    🔮が人魚です 
    🐑は作中の事故で四肢が欠損する設定

    #Psyborg
    psychborg
    #Cybussy
    #UKinky

    人魚ってさあ「う〜〜〜」

    布団をバタバタ脚で跳ね上げる。
    明日は小学校の入学式。
    新しい環境にドキドキしたり、ちょっと怖かったりして、ファルガーはちっとも寝れないのだ。

    小学校、という大冒険が出来そうな場所に今からワクワクが止まらない。

    止まらないが、寝ないと大目玉を食らうので、眠くなるかと思って借りた絵本を開く。

    表紙が綺麗な、人魚の絵本だ。



    ◇◇


    むかしむかしあるところに、美しい人魚が居ました。
    人魚はいつもひとりぼっちで、悲しくて、ちょっとひねくれていました。
    話しかけたい人をびっくりさせて、楽しんでいたのです。
    そんな暮らしは楽しいですが、やっぱり寂しくもありました。
    でもそんな時、人魚とお話をしてくれる人間が現れたのです。
    人魚は嬉しくて、毎日毎日彼が来るのを待っていました。
    彼は人魚が知らない話を沢山知っていて、教えてくれたのです。
    人魚も人間の彼が知らないことを沢山教えました。
    2人はとても仲良くなったのです。

    ……………………

    続いていく物語に、ファルガーはたまらず顔を上げた。
    人魚はさることながら、人間が人魚に話す話も面白いものばかり。
    本当に人魚がいるなら、俺も仲良くなってみたい!


    「よし、俺が人魚の話し相手になる!友達になろう、って声をかけるんだ!」
    ファルガーはベッドの上で可愛らしい決意を響かせた。


    ◇◇

    数年後



    制服を着るようになったファルガーは、
    そういえば、と思い出す。海によく来るようになったのはあの御伽噺を聞いてからだ、と。
    あの時のファルガーは、どうにかして人魚に会いたいと海に通い詰めていたのだ。



    幼い頃の無邪気な願いは今となっては微笑ましく、何処か他人事のようにも取れるくらい遠い記憶だ。

    ただ、海にはこうして来続けている。


    入江のゴツゴツした岩も慣れ親しんだ特等席だ。


    お気に入りの本を開く。
    さざなみをBGMに、岩の日陰にもたれかかる。

    穏やかな天気だ。
    春の日差しが穏やかに差し込んで、眠気をゆるりと引き起こさせる。

    これは、もしかすると寝てしまうかも。
    栞を人差し指と親指に挟んで思案したが、時すでに遅し。
    瞬きをした刹那に、ファルガーの意識は本から夢へと緩やかに落ちていった。


    ⭐︎



    「……はっ」
    いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。
    青かった空も紅みをまして夕焼けが近づいている。
    「参ったな…」

    誤算だ。
    本を開いたまま眠るとは思わなかった。
    こればっかりは仕方がない、と
    ゆるゆる、と頭を振って眠気をとる。
    立ち上がりかけて、気づいた。

    手に持っていた本が見当たらない。

    「あーークソ、落としたか…?」

    海に落ちたのなら、取るのは至難の業だろう。

    諦めるか探すかで思考が揺らいだ時、


    「ねぇ、」
    下の方から声がした。


    本来あり得ない、海の中から。


    「これ、キミの?」
    慌てて声のする方向に顔を向ければ、

    濡れた手が海から伸びて、びしょ濡れの本を持っていた。

    よくよく見ると、手には薄い水掻きがある。
    濡れた皮膚は、かけらも水にふやけておらず、つるつると滑らかな印象を与えている。
    そして何より、美しい声。
    透き通って、どこか人を安心させてくれるような声は人間が滅多に手に入れられるソレではない。




    人魚だ。




    え?

    そんなわけない、と言いたいのに、目の前にいるのは思い描いていた、いや、それより麗しい姿。

    どういう事なんだ。

    「…あ、ああ、俺のだ。ありがとう」

    なんとか、返事を返す。

    慌てて海に近づき、膝をついて受け取った本は冷たく、濡れた紙は手に吸い付いた。

    「えへへ、どういたしまして」
    ふわ、と微笑んで、人魚は体を陸へ乗り出してくる。
    片手は岩に付けて体を支え、頬に、冷えたもう片方が添えられた。



    ぐっ、と顔が近づく。
    瞬間。
    「〜〜〜♪」
    固まった俺の耳元で、誘惑の音がした。


    「ひゅ、」



    ガツン、と殴られた様な衝撃。
    ぐわ、と視界が揺れる。
    脳が、体の細胞が、掻き回されるような感覚。
    血が物凄い速さで流れていく。


    「あはは、大丈夫?急に歌ったから、強く効きすぎちゃったかな?」

    なんて事ない発言も、目の前の美しい生き物から発せられるだけで全身が震える。
    一音一音が、何にも勝る刺激になって全身を駆け巡る。

    息が、あがっていく。
    はやく、はやく、何か、何か…

    「あは、可愛い顔してる」
    唇を緩やかに撫でられて、シナプスがパチパチ弾ける
    冷たい爪が、赤い舌をつまむ。

    「あ、ぅ?」

    これは、いけない。

    考えが、意思が崩れていく。
    どうでもいいから、なんでもいいから、海を、歌を、彼の思いのまま


    震えながら、手を伸ばす。
    彼ごと海に、一緒に、潜ろうとして

    バチン!


    目の前で手を叩かれた。

    その音は、脳に張っていた膜を瞬く間に破いていく。
    「ひゅ、は、ぁ、ぁ?」 

    膝がカク、と崩れ落ちた。

    さっきの酩酊状態は何なのか、頭を振り今度こそ脳を起こす。

    「やりすぎちゃった…?ごめんね」

    嘘だろ。

    「は、は、ひゅ…」

    「………」
    息も絶え絶えのファルガーを見て。
    キュ、と人魚はなぜだかつらそうな顔をして、1人で海に潜ろうとする。

    それを目に捉えた瞬間。
    幼い頃の自分の言葉がフラッシュバックした。

    (俺が人魚の話し相手になる!友達になろう、って声をかけるんだ!)


    「!ま、まってくれ!」



    何故だか反射的に、人魚の手を掴んだ。

    「…ごめんね…もう当分陸には上がらないし、今まで通り此処は君の領分だから、」

    「俺と、友達になってくれないか?」

    「……へ?」
    ひょこ、と顔が覗く。


    「普通、怖がるか罵倒するか腰抜かすかだと思うんだけど…物好きなの?」
    「物好きでもなんでも。ただ、人魚と、いや君と仲良くなりたいんだ」

    岩場に片膝をつき、両手でひんやりした手をつつむ。
    こちらをみてぽけっとした顔すらも、顔の美しさで怖いくらいの輝きを放っていた。
    確かに、さっきの俺の体の支配権は目の前の人魚にあった。それが怖く無いのかといえば、もちろんめちゃくちゃ怖い。
    でも、それ以上に。
    これで終わりにしたくない。
    全く持って不可解、意味不明な行動。ただ、此処で終わりにしてはいけない、と何かが強く訴えかけている。

    「…手、暑いよ」
    「あ、悪い…!」
    「別に……」
    じゃぼん、と頭の半分まで浸かった人魚は海の中きらくぐもった声をだした。

    「浮奇。浮奇・ヴィオレタ」
    「…!俺はファルガー。ファルガー・オーヴィドだ。よろしく」




    これが、オレと浮奇の出会いだった。




    ◇◇




    海に引きずり込むもよし。
    お人形として遊ぶもよし。
    歌を聴いたなら、人に争う術はない。
    …術は無いのに。


    途中で、催眠を解いたのは、本当にただの気まぐれ。気まぐれ以外の何者でもないのに。

    どうして、友達になりたい、なんてトチ狂ったことを言い出せるんだろう。

    始めは、かなり気まずかったし。未遂でも自分を殺しかけた相手に話しかけられるものなの?

    ずっと昔から見ていた銀髪の子…ふぅふぅちゃんは、思ってた数倍変わり者らしい。


    でも、今はすっかり、ふうふうちゃんと話すのが、俺の1番の楽しみになっていた。
    これじゃ、本末転倒だ。


    今日は、どんな話をしようか。
    拾った貝殻が綺麗だった話は昨日したし、夏の夕焼けは迫力があるって話も一昨日くらいにした。

    星座について、教えて貰うのもいいかもしれない。

    海の中きらでは知り得ることのできない話を、ふうふうちゃんは沢山してくれる。
    今日はくるの遅いみたいだし、夜空を一緒に見れるはず。
    楽しみ…楽しみだなあ。





    でも、

    その日、いつまで経ってもふうふうちゃんはこなかった。

    次の日も、その次の日も



    ……もう何日も会えていない。
    もしかしたら、彼は俺に飽きちゃったのかも。
    やっぱり、初対面であんな事をしたのがダメだった?

    でも、あれ以外に、声をかける方法を俺は知らない。
    ああやって、話しかけて、逃げられて、また話しかけて…
    それをずっと繰り返してきた。
    そう、その生活に戻るだけ。
    また、1人に戻るだけだから。
    そう思うのに。
    毎日毎日、同じ入江で彼を待ってしまう。
    …今日も来なかった。

    深夜、
    海底に寝そべれば、遠くの空にゆらゆら水面は浮かんでいる。

    星座は海の底じゃ見えない。

    スズメダイは俺をきゃらきゃら嘲笑ってる。

    クマノミはチラチラ盗み見ている。


    ずるりと覗いた真っ黒なタコの足。


    変わり映えしない、海の景色。




    ずっと待ってるうちに、季節だって変わってしまった。
    今日も来ない。
    ジリジリと暑すぎる日差しが身体を傷つけようと攻撃してくる。

    暑い。

    頭まで浸かっても怠い。


    「ふうふうちゃん…」

    こんな思いするくらいなら。
    自分が人魚じゃなかったら、この辛さは味あわなかった?




    あれ。
    遠くに、綺麗な


    銀髪が見えた、気がした。


    遂に幻覚まで見えた始めたのかも知れない。

    「浮奇、浮奇!」

    あーーー。手振ってくれてる。
    かわいいなあ。


    なんか、リアルな幻覚だ。髪の毛一本一本、輝く瞳から、毎日思い描いていた顔立ち。

    こんな鮮明な幻があるくらいなら、現実なんて投げ飛ばしても誰も怒らないくらい。

    幻覚はどんどん近づいてくる。




    「浮奇!どうしたんだ熱中症か!?」
    ひんやりした手が額に当てられた。

    ……ひんやりした手?

    「いったん潜って体冷やしてこい!」

    「や、やだ」


    幻覚じゃ、ない?

    「眼離したら、またいなくなっちゃうんでしょ」

    手を握る。

    離さない、離したくない。
    ぎゅう、と一等力を込める。

    「浮奇、浮奇」

    互いの手指が絡みついて


    バシャン!

    「俺も海に入るから、それでいいか?」

    ふうふうちゃんが海に飛び込んだ。




    ◇◇


    「事故に遭って、暫く来れて無かったんだ」

    クラクラするのも収まって、俺はふうふうちゃんに質問を浴びせた。
    今まで何処に居たとか、その赤い手足の事とか。

    「事故、って」
    「なんて事ない、ただの交通事故…車に跳ねられただけだ」

    車ってそんな危険なものなの?
    速くて便利、としかふうふうちゃんから教わってないよ?



    なんて事ない訳がない。
    四肢が無くなったのに?





    長いこと会えなかったのに?


    「なにそれ…」

    本当になんてことない様に、にこ、と笑われる。

    「悪いことばかりじゃないぞ」
    ほら、と差し出された赤い金属の腕は、そっと浮奇に近づき、頬を撫でる。

    「体温がないから、四肢は冷たいままなんだ。これで浮奇に触れるようになった」

    機械の腕だから俺にさわれる?
    そんなのじゃ、とても満足できない。俺はふーふーちゃんと抱き合いたいのに!
    腕しかダメとか、体温が上がってるからとか、そんな煩わしいもの全て無視してハグがしたい。

    そのためなら、そう。
    人間、人間になろう。
    そうだ、それが良い!

    何で考え付かなかったんだろうこんな素晴らしい事!手段なんて海のを漁ればいくらでもあるし。


    「ねえふうふうちゃん。俺人間になるよ」

    「へ?」

    「ふうふうちゃんがどうかは知らないけど、もう決めたから。」


    「ずっと海で独りぼっちより、隣に居たいの。いい?いいよね。」




    「浮奇!」
    ぐ、と視線がかちあう。
    ふうふうちゃんの両頬が真っ赤に染まってる。


    「浮奇。俺はお前を愛してる。だから、お前がいいなら、俺はこっちに来て欲しい。
    でもこれは傲慢、我儘だ。俺は何も捨てることなく、浮奇にだけ変化を強要してるんだから。」

    そんなこと、どうでもいいのに!

    「海は2人だと広すぎるよ。やっぱり水の上がいい。」

    てか、え?好きって、愛してるって?
    「ふうちゃん!ふうちゃんふうちゃん!俺も好き!大好き!愛してる!」

    尾鰭でバシャバシャ海をはねる。
    キラキラ水滴が飛び跳ねて、ふうふうちゃんの顔にかかった。
    そうだ。

    「これ…お守りだから。持っていて。」

    自分の鱗を剥ぎ取り、赤い機械の手に渡す。

    「これは、人魚的に、意味があるのか?」


    「うーーん…あるよ」
    内緒だけど。


    「会いに行くから」
    待ってて。


    ◇◇




    高校の入学式。


    新しい生活に新しい友達、未来に恐れと緊張とひと匙の高揚感を与えるであろう日だ。

    それでも、俺の心を占めているのはあの美しい人魚だけ。

    ポケットに入っている鱗を握りしめる。

    今はこれだけが、あの夏の約束の証だ。

    あの時を境に、浮奇とはぷっつり会えなくなった。
    今度は俺がお預けを食らう番、というわけだ。


    ボケっと考えながら歩いていると、前の人物が鞄からスマホを出すと同時に、ハンカチが落ちるのが見えた。
    しかも、当人は落ちたことにも気づいていないようだ。
    慌てて駆け寄り、貝殻が綺麗に刺繍されたハンカチを手に取る。
    「これ、お前のだろ?」

    落としたぞ、と差し出せばスマホからあげられる顔。

    それは、この世の誰よりも愛おしいもので。

    ああ、やっぱり。




    「…!ありがとう」

    俺の顔を見てとろりと溶ける微笑み。

    機械の手を、暖かい人間の手が掴む。

    「ふうふうちゃん、会いに来たよ。恋人に、なりに来たんだ」

    散りかけの桜が吹き荒れていく。
    浮奇が世界一の笑顔で笑う。
    俺もそれに応えて、抱きつくように口づけを交わした。
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