村ホラーRTA 公民館に入ると、そこは外と変わらぬ闇に包まれた空間だった。むしろ今まで唯一頼みの綱だった月明かりが遮られ、そのまま落下してしまうのではないかと思わせる程の漆黒があった。
一歩足を踏み入れると、ギィイと木製の床が軋んだ。埃臭さが鼻につく。確か佐代子の話ではここに各家の当主が集まっているとのことだった。しかし、狐と早乙女が足を踏み入れた建物は歩を進める度に埃が舞い上がる。使用されているどころか、むしろ放置されているかのようだった。
「公民館、ここですよね?」
「あぁ、人が使うにしては何の手入れもされていないがな」
早乙女が険しい視線で床を観察している。狐も同じ意見だった。掃除がされていない。しかも積もった埃の中に足跡一つ残されていない。つまり、人が立ち入った形跡がないのだ。
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