苛立ち あいつを見ていると、ムカつく。
いつもヘラヘラと笑っている。ムカつく。
黙ってさえいれば綺麗な顔をしてるのに、口を開けば皮肉や揶揄いが飛んでくる。ムカつく。
街に入ればチャラチャラと女に声をかけている。ムカつく。この間なんかステラおばさんにまで声をかけていたらしい。ぶん殴ってやろうかと思った。
並んで立つと、少しだけ見下ろされる。ムカつく。
そのくせ座るとあいつの方がほんの少しだけ低くなる。ムカつく。
雑魚との戦闘なんてオレ一人で充分だってのに、いつの間にかカバーに入っている。ムカつく。この方が戦いやすいだろ?なんてニヤつく位するならぶん殴ってやれるのに、そういう事はしない。余計にムカつく。
驚くほど静かに素早く動く。そのあたりは、正直敵わないと思う。ムカつく。
腕が立つくせに、手合わせに誘ってものらりくらりと躱される。ムカつく。
どうにか引きずり出しても、本気じゃないのがわかる。途中で降参だオレの負けだと適当に切り上げようとする。無茶苦茶ムカつく。
オレよりずっと軽装甲のくせに、いつの間にか前に出ている。ムカつく。
ヒールライトをかけようとすると、何かを誤魔化すように笑う。ムカつく。
ヘラヘラ笑って鬱陶しい位に喋っているくせに、肝心なことは言わない。ムカつく。
いつもいつも、故郷のこと仲間のこと、それにオレ達のことばかりで、自分を後回しにしている。ムカつく。
大事なものを誰よりも無くしているくせに、無くし続けているくせに、その痛みも苦しみも表に出さずに笑っている。ムカつく。
あいつのせいで、誰かに背中を預けることを覚えてしまった。背中を預けて戦う心地よさを知ってしまった。もう一人で戦える気がしない。ムカつく。
背中を預けるオレを通して、別の誰かを見ているのが分かる。ムカつく。
夜中、うなされているのを知ってる。あまり眠れていないのも知ってる。だけど、そんなことおくびにも出さず誰よりも早起きしたような顔で誤魔化そうとする。ムカつく。
うなされながら、誰かの名前を呼んでいる。何故かもの凄くムカつく。
ムカつく。ムカついてムカついて、目が離せない。