4月の桜無配
「なぁいちまつ、さくら、きれいだなぁ」
ふわふわと浮ついた声に、殆ど閉じかけていた瞼を少しだけ持ち上げる。人気のない公園、頼りない街灯に照らされた葉桜と一面に広がる花びらの絨毯は、まるで絵の中の世界みたいに美しかった。
「…ん…もうほとんどちってるけどね…」
「そうだなぁ、きのう、風がつよかったから…そろそろ花見のきせつ、おわっちゃうかもな」
「…そうだね…」
いつもの無駄に腹から出ているデカい声とは随分違う、少し舌足らずに吐息混じりで紡がれる言葉はひどく耳に心地良い。ふらふらとおぼつかない足取りで歩くカラ松はさっきから脈絡もない話を繰り返したり、突然笑い出したり、急に立ち止まったかと思えば走り出したり。まるで元気な幼稚園児を相手にしているような気分だった。
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