あのころの、「おおすみさん。ご無沙汰してます」
艦を見上げ、声を張った。それぞれがここ佐世保へ入港することはそれなりにあるものの、母港の違うもの同士が顔を合わせる機会は数少ない。作業にキリを付けて艦を降り姿を探す。当たりを付けた喫煙所、その手前で見付け駆け寄った。
「ん、まだ若いな。元気にしてるか」
振り返った顔はすこし疲れているようにも見える。把握しているわけではないが多忙なのは耳に入っている。自分も決して余裕があるわけではないけれど。
「お陰様で。あの、せっかくなので伺いたいんですが。くまの、はどんな子でしたか」
並んで歩きながらそう問えば苦笑が返ってくる。開口一番で聞くにはなんというか、先走ってしまった気もするが仕方がない。後輩が気になるのは正直なところなのだから。
764