梅仕事外の雨音がやけに耳につく。土ぼこりのにおいがドアの新聞受けの隙間から漏れてくるようだ。玄関には大学からの帰り道に濡れた傘が立てかけてある。
キッチンの棚に、空のタッパや琺瑯の保存容器が重ねてある。汐見が遊びに来た時に、作り置きしてくれた大量の料理が冷蔵庫から消えて、数日経つ。中身は全て胃の中に収めてしまった。保存が効くからと作ってくれた、唐辛子や玉ねぎのアチャールも食べ尽くしてしまった。
汐見の手料理は最高だ。食欲を刺激する芳香を放ち、舌を興奮させる美味さがあり、全てが血肉になる感じがするが、自分で作った料理は味気ない。
学園在学時に十傑に名を連ねてきた矜持もあり、料理の腕を落とさないように気をつけてはいる。
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