過去作を2つまとめたもの『やめてくれ(切実)』(ちょぎくに/国広side)
最悪だ。
眼前に詰め寄ってきた長義から目を逸らそうとすると、逃げることは許さないと言うように顔をガッシリ掴まれ動かせなくなる。
「それで?誰に執心しているのかな」
「あんたに教えるつもりは、ない…」
事の発端は俺にある。
写しとしての憧れというか、俺はずっと、昔から本歌のことが好きだった。
人の体を得た今、その感情がわかりやすいものへと昇華していき、監査官として現れ、山姥切長義としてこの本丸に来た本歌に、俗に言う恋というものをした。
だがそれを伝えられるわけがないし、そもそも伝える術もろくに知らない。
主に相談したところ、現代へわざわざ赴き、少女マンガというものを買ってきてくれた。それを見て学び、練習していたところに本歌が現れ、一部始終を見られていた俺は、こうして問い詰められているというわけだ。
2489