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    CBK_Hirekatsu

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    試運転

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    覚えてる範囲のちょぎくに過去作2つ。
    それぞれ独立した話

    過去作を2つまとめたもの『やめてくれ(切実)』(ちょぎくに/国広side)

    最悪だ。
    眼前に詰め寄ってきた長義から目を逸らそうとすると、逃げることは許さないと言うように顔をガッシリ掴まれ動かせなくなる。
    「それで?誰に執心しているのかな」
    「あんたに教えるつもりは、ない…」
    事の発端は俺にある。
    写しとしての憧れというか、俺はずっと、昔から本歌のことが好きだった。
    人の体を得た今、その感情がわかりやすいものへと昇華していき、監査官として現れ、山姥切長義としてこの本丸に来た本歌に、俗に言う恋というものをした。
    だがそれを伝えられるわけがないし、そもそも伝える術もろくに知らない。
    主に相談したところ、現代へわざわざ赴き、少女マンガというものを買ってきてくれた。それを見て学び、練習していたところに本歌が現れ、一部始終を見られていた俺は、こうして問い詰められているというわけだ。
    「へぇ?俺に教えられない相手なのか。主じゃなさそうだね。刀剣男士かな?」
    もっと偵察を下げてくれ。頼むから。
    「あ、あんたには関係ないだろう…」
    「おやおや。お前は俺の写だろう?関係ないことないだろう」
    いやそういう意味じゃない。というかまあ実際は関係大ありなんだが。
    「さて、どう白状させようかな。ああ一応言っておくけど、お前の保護者として聞いているのであって、気になるとかそういうわけじゃないから」
    「やめてくれほんと…」
    意地悪い顔で舌なめずりをする本歌。そんな表情でも、俺に向けられていると思うと嬉しくなってしまう。惚れた弱みとはよく言ったものだな…
    さて…どう躱そうか……



    ーーーーーーーーーーーーー



    『あと0cm』(ちょぎくに/国広side/バレンタインネタ)

    「じゃあ兄弟、頑張って!」
    そう言うと、料理が得意な方の兄弟は厨から出ていった。
    今日はバレンタインということで、兄弟に教えられながらチョコレートなるものを作った。本歌に渡したかったのだ。
    彼に渡すのならそれ相応の出来でなければ認められない。そもそも受け取ってもらえるかどうかはこの際考えないこととした。
    正直、こんなイベントごとでもないとろくに話しかけることすらできない。
    自室に一度戻り、チョコレートを前に熟考する。
    よくよく考えてみたら、イベントごとだからといって話すこともさほど無かったように思える。あの凛とした姿を見ていられるだけで、俺にとっては充分だった。
    今更どうこうなろうとは思わないが、積もり積もった想いをこのまま無視し続けるのは無理があった。
    そして作ったわけだが………うん。兄弟には申し訳ないが、自分で食べきってしまうのが一番いいかもしれない。
    恋心と呼ぶべきであろうこの感情を、嚥下し、消化してしまえばいい。
    一粒口に入れてみる。
    じんわりと甘さが広がり、自分の情けなさに染み込む。
    こんなことしかできないから、余計本歌から嫌われるのだと思うと、心臓が苦しくなる。
    気がついたら、泣きながらチョコレートをひたすらに口に突っ込んでいた。
    こんなところを誰かに見られたら、気が狂ったとでも思われるだろうか。まあ実際のところそんな様なものだ。
    チョコレートが口の中で溶ける度に、脳が痺れるように何も考えられなくなっていくようだった。
    それは好都合で、このまま本歌への想いと一生に溶けてしまえばいいと。
    そう思っていた。
    「偽物くん、居るかな?主から書類を……」
    その声に一気に現実に引き戻される。なんで、どうして。
    余程急ぎの用なのか、こちらからの応答を待たずに本歌は襖を開けてしまった。
    「あ…っ!」
    「居たのなら返事してくれるかな。ん…?」
    襖を抑えようとしてそちらを向いたのは得策ではなかった。
    「……偽物くん、なんで泣いてるのかな」
    見られた。一番、見られたくない刀に。
    「…ああ、この甘い匂い、そこのチョコレートのか。へぇ、随分綺麗にラッピングされているね。誰からもらったのかな?」
    「ぁ、いや…違っ、これは…!」
    「違う?何がだい?そんな大事そうにして……上手く作られてるね。手作りか。相当愛されてるじゃないか?なぁ」
    必死に隠そうとしても、本歌にいとも容易く奪われてしまった。
    言葉にはいつも以上に威圧感が込められている。
    「待っ、て…違う、違うんだ……ほん、か…」
    「いい加減泣き止みなよ。泣くほどそいつが好きなのかな?…大層なことで」
    ああ、そうだった。本歌が俺の話を聞いてくれるわけなんてなかった。
    ただ、ずっとこのままでいるのも辛い。
    どうせ聞き入れられないのだから、言ってしまって早く突き放された方がいい。
    「ほら、早く白状してみなよ。誰からの贈り物なのかな、これは」
    「……ちがう、それは…俺が、作ったものだ…」
    「………へぇ、偽物くんが。ああ、堀川国広にでも手伝ってもらったのかな」
    「ああ、そうだ…」
    「ふーん。で、想いを伝えられなくて自分で食べてしまおうとしたって所かな?お前らしいじゃないか」
    「……本当は、あんたに渡そうとしていた…」
    もう隠しきれるものは何も無いが、被っている布をさらに深く引く。
    本歌の今の表情なんて見たくなかった。
    「……………え、俺?」
    「……っ、そう、だ…」
    「…びっくりした……てっきり嫌われてると思ってた…」
    「……え?」
    思わず顔を上げると、キョトンとした顔の本歌と目が合った。
    「え?ってお前、俺を見る度に顔を背けていたじゃないか」
    「それを言ったらあんただって、まともに俺と話してくれたこと無かったじゃないか」
    「この際そんなことはいいだろう」
    良くない。全然良くない。
    というか、本歌はもう既にチョコレートの方を見ている。
    「せっかくお前が俺のために作ってくれたんだ、一つも無駄にしたくないからね。いただくとしよう」
    「………ど、どうだ…?」
    「……うん。美味いな。さすがだ」
    そう言う本歌の表情は本当に嬉しそうで、何だか気恥ずかしくなってしまう。
    「積もる話もある。茶を持ってくるから、今日はゆっくり話そうか」
    「…ああ、よろしく頼む」
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