高専5×人魚7【あらすじ】本家の敷地を歩いていると、離れのひとつから聞き慣れない水音がした。
雑多なものの詰まった、いわゆる倉庫だったはずのそこから聞こえるのには、水音など不可解である。
いぶかしんで中を覗くも、やはりガラクタとしか思えぬ物がひしめき合っているだけ。その奥から、微かな水音が続いている。
音源を求め辿り着いた最奥には、区切りとして明らかにおかしい、襖が設えてあった。ただの倉庫としていたはずの倉の奥に、襖とはこれいかに。
そっと開けると、中には大きな水槽が鎮座していた。
たっぷりとした水中には、ひとりの男が全身を沈めて浮かんでいる。
死んで居るのか。
人形か。
誇る慧眼で見ずとも、どうやら後者だと分かった。
なにせ男の下半身は、腰からゆるゆると鱗に覆われた魚になっていたから。これは、人魚を模した人形だ。
1968