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    aymsyb94

    @aymsyb94

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    支部に置いてない奴はだいたいこっち
    R-18ドロ小説とか健全とかごちゃまぜ

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    aymsyb94

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    Δ後編、家族なΔドラロナがくっつきます
    聖杯の泥とか、色々詰め込んだので支部に上げづらかったこの後編、暫く置いておきます~

    吸血鬼すぐ死なない!常世神社に封じられてる かみさま の事知ってる?

    願いを言うとね、どんな願いでも叶えてくれるんだって。
    でも気をつけて、
    願いを叶えてくれる代わりに、大切なものをひとつ奪われちゃうんだって。

    一番大切なものを無くしてもいいくらいの願い事って……何だろうね?






    上層部の大掃除の一件から一ヶ月程過ぎた。
    関与していた人間は残らず一掃、と言いたいところだが上手く難を逃れた者も当然いる。
    ……まあ、油断しきったところで次の一手を講じれば良い。軍略、人心掌握は私の最も得意とするところだからね。



    「ドラ公おはよー」
    「おやロナルド君まだ日差しが出てるのに早起きだね」

    前回の一件で屋敷に同居する事になった吸血鬼のロナルド。
    吸血鬼の中でも特に強い力を持っている黙っていれば白皙の麗しい青年なのに、吸血鬼らしくないと理由で私に殺してくれと頼んだりする不思議な子だ。
    食事量は多いが吸血衝動にも強く、尊敬する兄の教えで悪さを働く同胞をグーパンでシメるので前世は退治人でもやっていたのでは?と思うくらいまっすぐな心根を持っている。

    日中起き出すこともままあるので、ロナルド君が来てから遮光カーテンを取り付けたり、棺を取り寄せたり…お陰でお父様が最近何かと騒がしくて困る。

    「俺は日光にも強いから平気だ!ドラ公は普通にしてるけど、日光平気だよな?」
    「日焼けはするけどね、ちょっとだけ血が濃いから」
    「ふーん…ドラ公は吸血鬼にはならねぇの?」

    棺から起き出してすぐに凄いことを聞いてくる。
    確かにダンピールである私は吸血鬼であるお父様の様に血を貰えば容易く吸血鬼になれるだろう、でも今は……。

    「今は吸血鬼になる必要性は無いかな、まだやることもあるし」
    「そ、っか……そうだよな、隊長やってんだもんな」

    俯いた彼は何か言いたげにしているが、無理に聞き出しても良くないだろう。

    「……何か嫌な夢でも見た?」
    「うえっ……いや、なにも…なんも、ねぇよ」

    嘘が下手すぎて可愛いなぁ。
    多分君が考えている事はまだ叶えてあげられないんだけど…ロナルド君が一番幸せになれる方法を考えたいものだね。

    「お腹空いたでしょ、ホットケーキ焼くからジョンを呼んできてくれる?」
    「っおう!」

    そうそう、ロナルド君はそんな風に楽しく笑ってよ、笑顔が君には一番似合っているよ。






    「はい皆さん注目してください、兼ねてより希望していたロナルド君の吸対所属が正式決定しました~」
    「よ、よろしくたのむぜ、じゃないお願いします」
    「よろしく頼むぞ」
    「これで隊長のワーカーホリックが改善されますね」
    「ようやく隊長にも春が……」

    退治人組合との引き抜き合戦を繰り広げ、未だに混乱している上層部にロナルド君がいかに有用で優秀で戦略的価値のある人材だと挙げ連ねて来た甲斐があった。
    善意の協力者だった吸血鬼が吸対に所属する事が他の吸血鬼の犯罪抑止に繋がる、という事を熱心にアピールしたので残念だが隊服は支給されていない。
    その代わり、吸対の刺繍が入った腕章を任務時には着けるようにしたので他の部署との連携時には見分けも着くだろう。
    ロナルド君の仲間達も退治人組合に入ったり、VRCに積極的に協力してくれているとの事で喜ばしい限りだ。
    ……ああ、でもロナルド君の隊服を着た姿はさぞ格好良かったろうなあ。

    「隊長嬉しいのは分かりますが、会議を始めてください」
    「おっとすまない」

    もう少し喜びを噛み締めていたいが残念ながらお仕事の時間だ。





    「常夜神社に出没する……怪異?吸血鬼じゃなくて?」
    「何でも願いを叶えてくれる、そんな噂があるそうでね…その代わり願いを叶えた代償になにかひとつ大切なものを失うそうだよ」
    「……それって意味あんのか?」

    神仏に祈りを捧げる習慣の無いロナルド君の疑問も最もだが、人間は脆く弱いものだ。
    一等欲しいモノの為に手段を選ばない、というなら私にも理解は出来るが、人類は常に愚かな選択をする。

    「実際に神社周辺で不可解な現象も起きているみたいだから困るのよね」
    「最早何でも屋さんよね、私達…」
    「うむ、緑化活動にも力をいれているからな!」

    人手が足りていないのは間違いない為、巡回と並行しつつ各自聞き込みを始めて貰うことにした。

    「はいはい、いつも通りに頼むよ諸君」
    「なードラ公俺は?」
    「ロナルド君は私とここで研修ね」
    「「「職権乱用だ……」」」

    煩いよ、君達。





    「偉いねロナルド君、今日の範囲はこれでおしまいだよ、ちょっと休憩しようか」
    「やったー!」

    テキストを閉じてお茶の用意をしようと立ち上がると
    、お菓子の気配に気づいたのか万歳して喜んだ。

    ロナルド君は基本的に午後から夕方、場合によっては夜まで任務に就いてもらうことになっている。
    吸血鬼の活動時間が夜という事もあるのと、日光に強いとは言え、生活リズムを崩しては意味がないからだ。
    今もちょっと眠そうに銀色の睫毛を伏せがちにしているので、本当に頑張ってくれている。

    「今日はジョンがご町内フットサル大会に出てるからお菓子は全部食べて良いからね」
    「えっ…ドラ公は食わねぇの?」
    「う゛っ……す、少しだけ頂こうかな」

    小首を傾げつつ、長い睫毛を瞬かせる仕草が強烈に可愛い。
    ロナルド君が遊びに来るまではうっすいアメリカンコーヒーしか飲まなかったが、紅茶や牛乳、トマトジュースまで用意するようになった。
    基本的に何でも良く食べ、美味しく頂いてくれるロナルド君はジョン先生同様に私の食生活に彩りを添えてくれるのだ。

    「ドラ公この…しゅーくりむ?美味しいな!」
    「ありがとう、そんなに慌てなくても沢山あるからゆっくり食べなさいね」

    ほっぺを膨らませながら幸せそうにシュークリームを頬張る姿に思わずジョンを重ねてしまう。
    懐に入れた身内ほど甘く、世話を焼いてしまうのは私の悪い癖だが、この笑顔は何物にも替えがたい。

    「ん!……そーいえばドラ公、神社のことあんまり良く思ってないよな」
    「……どうしてそう思ったの」
    「何となく……?あ、あんまりきいちゃいけない事だったか……?」

    自分なりにポーカーフェイスは上手い方だと思っていたが、本能的な直感が鋭いせいでロナルド君は違和感を覚えたようだ。

    「……私の母の故郷はここ日本でね、実は常夜神社に巫女として務めていたこともあったのだよ」
    「巫女……」
    「母は法政の道に進むことを決めていたから何とか断ろうとしていたんだけど、非常勤でも良いからってかなり強引頼まれたらしくて」

    遠い親戚筋を当たり、神主の一族の中で大学に融通が効くものがいたらしく大学に通う間の諸費用全て免除衣食住も全て負担する、卒業後は引き継ぎをするから大学の4年の間だけで良い、とほぼ勝手に決められたそうだ。

    「ひでぇな…」
    「ああまったく!でも、それで大学でも名前が広がって人が寄ってこなくて楽だった、なんて言ってたけどね……お父様以外は」 
    「え……?でもドラ公の親父さんって」
    「うん、お父様も昔は色々と好奇心旺盛でね、人間になりすまして日本に留学に来てた事もあったんだ……正直、お父様がいなければ神社から抜け出すことは出来なかっただろうね」
    「そんな……」
    「ああ、今はお母様は無事になりたかった弁護士になって、吸血鬼と人間の仲立ちをしてくれているよ……ただ、今でもしつこく連絡が来るらしいから」

    お母様は特別巫女の素養が高かったらしい、心身共に清浄であり未婚であることが絶対条件であるのに、神主一族は未だに諦めていない。
    お父様が日本の、しかも吸血鬼対策課に所属することを許してくださったのはなかなか時間のとれないお母様達に代わり、私が先んじて異変を知らせる役目も任せてくれたからだ。

    「ドラ公、なんか凄く辛そうだ……ぎゅーってするか?」
    「ありがとう、そうだね…君が傍にいてくれるなら私はどんな事でも出来そうだよ」
    「ん!じゃあぎゅーっだ!」
    「う、嬉しいけどそういうのは屋敷に帰ってからにしようね……」
    「???」

    職場でロナルド君と抱き合ってたら今度は公私混同だと言われてしまう。





    「ジョーンただいまー!」
    「フットサルは楽しかったかい?」
    「ヌー!ヌンヌー」

    手製のユニフォームを勇ましく着こなしているジョンは新横浜のヌー君として今日も活躍したようだ。
    吸対になかなか届きづらい吸血鬼の被害や市民の困り事など、情報を持って帰る出来るマジロだ。

    「ふむ、ジョンのお友達にも常夜神社の噂が広がっていたのだね?」
    「ヌー」
    「……やっぱ吸血鬼の仕業なんだよな」

    同胞が市民を無差別に襲っている可能性にロナルド君も心中穏やかではいられないだろう。
    一部の凶悪犯を除けば新横浜の同胞は己の性癖に忠実に暴れまわってしまう方が比率としては多い。
    いや、暴れまわるのも困るのだが。

    「もう少し捜査を続ければ分かることもあるさ、さあジョンとロナルド君はお風呂に入ってくると良い」
    「あっそうだな、ジョンドロドロだもんな」
    「洗ってやってくれるかな?」
    「おうっ!いこーぜジョン」
    「ヌッヌ~」

    最近ドライヤーを誰かに使いたくてたまらないロナルド君は楽しそうに浴室へ向かってくれた。

    「常夜神社のかみさま、ねぇ…」




    ふわっふわの泡で丁寧に泡だてられたボディソープで汚れを落として貰い、最近お気に入りの保湿クリームを甲羅に塗って貰ったジョンはご機嫌でヌンヌン歌っている。
    最初は不安だったらしいがロナルド君の手付きは非常に優しく、今も気をつけて腹毛をブラッシングしてくれるのでとても助かる。

    「おや、ロナルド君の髪はまだ少し濡れているね」
    「ヌッ」
    「えっ?お、俺は後でやるからいいよ…え!ちょ、ドラ公?」
    「夕食の支度も済んだし、私が梳かすよ……綺麗な髪だね」

    ドライヤーを掛けながら熱を当てすぎないように丁寧に梳かしていくと、耳が少し赤くなっていた。
    ご兄弟がいるとは言っていたが、妹さんの世話をする方が多かったらしいので、こうやって自分が甘やかされるのはまだ照れるようだ。

    「じゃ、じゃあドラ公も後で俺がドライヤーやるからな!」
    「うん、お願いするね」

    可愛い子がやってくれるなら何でも嬉しいんだよ。





    夕食を終えて、私も風呂を済ませて待ちかねていたとばかりにロナルド君につかまって、宣言通り髪を乾かされて、明日の書類でも見ておこうかと思っていたら。

    「あの……一緒に寝てくれねぇかな……?」
    「っ?」

    ロナルド君がとんでもない爆弾を投げてきた。

    「ど、どうしたの?何か」
    「棺が、広くて、まだ落ち着かなくて…その……」
    「…………ンッ」

    ロナルド君がここに住むことになってまず用意した棺は何度もお父様と連絡を取り合い、カタログを付箋だらけにする程選びに選んだ逸品だ。
    私は吸対に入ることを決めていたので、現在はベッドを使用している。
    ロナルド君も喜んでいたうえに、最近はお気に入りの毛布を持ち込んですやすやと寝ていた筈だ。
    ーーーもしかして、寂しくなってしまったの。

    「や、やっぱ駄目だよな、俺、図体デカイし「寝ようか」…ふあっ?」
    「あー今日は肌寒いしジョンと皆で寝れたら嬉しいなって思っていたんだよ、ほらおいで」
    「~~~~~~っ」

    ああもう目に入れても痛くない私の可愛い吸血鬼、今度の休みには絶対大きなサイズのベッドを買い換えることにしよう。






    神社に隠された秘密
    一回神社が暴走してやばいってなったところを力のある少女(ミラママ)を期間限定で封じの巫女としてとどまるように依頼
    (大学生で、大学にも最寄りになるし、金銭的にもオールカバーしてくれるので引き受けていた)
    封じの巫女はミラママにもう一度お願いしたく、手段を問わないぞ

    とミラママのばっくについている竜の一族をあんまり良く分かっていない神社関係者がぎゃいぎゃい


    「ーーーですから母は日本に居りません、それに巫女を務めろなどと、ふざけるのもいい加減にして頂きたい!」
    「……隊長があんなに大声出すの珍しいですね」
    「嫌みたっぷりに笑って影で策を練るタイプだからな」

    大声上げたくもなるわ、あの馬鹿共。
    とうとう息子の私にまで電話を掛けてきやがった、言うことも滅茶苦茶なうえに非常に尊大な態度で腹が立つ。

    「ドラ公大丈夫か?嫌なこと言ってきた奴いるのか?」

    ロナルド君にまで心配を掛けてしまった。
    心配そうにジョンと一緒によしよしと頭を撫でてくれるので抱き締めたくなるが、職場なので我慢だ。

    「ありがとう、もう大丈夫だよ」
    「隊長、多数の下等吸血鬼が出没、退治要請来ました!」
    「……数は!」
    「現状報告があるだけで軽く見積もっても複数の箇所に十体以上は出没しているそうです!」




    報告を受けて出没箇所を地図に記した瞬間、頭が沸騰するかと思った。
    常夜神社を中心におき、出没箇所を点とし、線を引くと五芒星が出来上がったのだ。
    ……とうとう強行手段にでやがったな、あの馬鹿共!

    「手をつけられなくなって母に泣きついてきたのか……ふ、ふふふははははは!」
    「隊長マジ切れじゃんか~」
    「あの状態になると気が済むまで策に策を練り上げるぞ……」
    「御愁傷様……」

    前回は上層部を相手にしたこともあり、かなり慎重に何より感情に出さないことを徹底していた。
    だがやらかしてしまった馬鹿共に礼儀など必要無い、徹底的に潰す、潰しまくってやる。
    二度と竜の一族に手をだそうなどと思わせんぞ。




    「各自作戦地点に到達完了しました」
    「退治人組合もいる事だし、こっちはすぐに肩がつくだろうね」

    常夜神社の資料を調べれば調べるほど、こちらに圧を掛けてきた神主一族がキナ臭いことがよくわかった。

    「ミカエラ君、何人か連れていくけどこっちの現場は任せていいかい?」
    「はい、一時間もあれば事足りるでしょう」
    「ドラ公どっか行くのか?」

    スラミドロをデコピンで滅していたロナルド君が雛のように後をついてくる。
    心配だからジョンはおいてきたけど、ロナルド君はむしろ一緒にいて貰った方が進めやすいだろう。

    「うん、ちょっとお話し合いにね」





    「なっ……」
    「どうもこんばんは、新横浜吸血鬼対策課です」

    五芒星の中心点、常夜神社の神主にはもう後が無いだろうね。




    「……と言うわけですので、あなた方が今回の下等吸血鬼大量発生について関与しているのは分かっているんですよ」
    「……何の事か……母君を連れてくるわけでもなく、文句ばかり言いにきたのか?」
    「常夜神社の成り立ちには吸血鬼が深く関わっていますね?」
    「何故それを……っ!!」

    約二百年前ほど前の事、国を追われた吸血鬼が居た。
    吸血鬼は一族に伝わる杯を持ち出し日本に渡り、常夜神社の神主の娘を妻に迎え、とある鬼を討伐し、神社に封じ込めた。
    表向きには広まっていないこの話が神主一族の共通認識らしい。

    「そしてその吸血鬼の血と古の聖杯が脈々と受け継がれている……との事ですが」
    「だ、大体な元はと言えば吸血鬼が鬼神様をここに封じ込めたせいだ!」
    「そ、そうだそうだ、やはり吸血鬼など……」
    「それは違いますな」
    「はっ?」
    「片手間に調べてみたが、事実はこうだ」

    神主に向かって複数の書類を落とせば文字を追っていく内に、表情を一変させた。

    「お、陰陽師と吸血鬼の契約ッ?!鬼神様の正体は……ただの人だとぉ?!」

    正確に言うならば平安の時より数多くの延命の術を行使してきた生き汚い人間だ。
    吸血鬼が持ち込んだ杯はきっかけに過ぎない。
    吸血鬼の血を目当てに陰陽師が仕掛けた結果、双方が相討ちになり、呪と吸血鬼の血が混じった杯が出来上がってしまった。
    そしてお互いを封じ込めている現状のパワーバランスが崩れたのだろう。

    「これで分かりましたな?聖杯による繁栄など真っ赤な嘘であることが、我々はあなたの一族に連なる過去の恩讐を断ち切るためにここに来たのです」
    「う、う……ああ……そ、んな……」
    「祖先の呪を使い、下等吸血鬼を放つ……現代の法律ではあなた方を裁くことは難しいかもしれないが……なあに、此方には幾らでもやりようがあるのは分かっておられるだろう」
    「「ひ、ひぃいいいいいいっ!」」

    と、まあ脅すのはこれまでにしておこう。
    この後は当事者だった両親に任せれば良い。
    久しぶりに邪悪な顔を作った自覚があるため、切り替える為にネクタイを調整する。
    何故かって?

    「ドラ公格好良い……っ」
    「ヌー」

    熱っぽい様な眩しい目で私を見つめるロナルド君ににやけてしまいそうだからだよ。





    「しかし聖杯なんて…本当にあるんでしょうか」
    「まあ無いだろうね、あったとしても今は人間の欲望の煮凝りで型どった別の何か」
    「それをどうにかすれば良いのだなムン!」

    言うは易し行うは難し。
    元は世界大戦後にこちらに渡ってきた吸血鬼が所有していた聖杯を陰陽師が不死の力を得るために吸血鬼ごと、生け贄として地下に封じ込めているのだ。
    破壊したら一体どんな事が起きるか、ああ考えるのが面倒臭い。

    「鬼神は何故神社に封印されていたのかしら」
    「恐らく神主の祖先が無理矢理身動き出来なくしたのだろうね、封じ込めた場所を神社にした、のが正解か……おっと」
    「何だ、よこれ……」




    ロナルド君が驚くのも無理はない。
    神社の地下に封じの間があり、そこにはスラミドロをもっと粘液化させた、もっと醜悪な姿と瘴気を放つ何かがいた。

    「吸血鬼の成れの果て、がこれですか……」
    「ど、ドラ公これ……何とかならねぇのかよ!」


    「ロナルド君、研修で一番最初に教えた事は覚えているね」
    「…………ッ悪事を働いた同胞に情けは掛けられない」

    偉いね、ちゃんと覚えてくれていたね。
    納得してくれた彼は次の瞬間には、同胞を倒す……いや、救う覚悟を決めていた。

    段取りは決まっている。
    ロナルド君の火力の高いグーパンで塵化させた後で、下がらせた後に強烈な紫外線照射機を一斉に浴びせる。
    ちょっと私が日焼けするぐらいだが何とかなるだろう。

    「宜しくお願いするよ、ロナルド君」
    「ああ、わか……っ」
    "杯ハ満チタ"
    「え……ッ…」
    「ロナルド君ッ!」



    どうも最近緩みすぎていた。
    平安から続く陰陽師の最後の封印は寸での差で消滅してしまった。
    元は吸血鬼だったモノだ、最終的に存在を消滅させるには陰陽師の手にも余ったのだ。
    一番近しい存在、つまり吸血鬼のロナルド君を新たな依り代として決めたようだ。

    「……か、らだが……ッ?!」
    「ま、不味いぞロナルドが乗っ取られたら」
    「私達敵わないんじゃないの……って?!」
    「た、隊長?!無茶です!」
    「ど、……ら公、やだ……くんな……っくる、なっ!」

    粘液に包まれたロナルド君が身動きが取れなくなり、打撃をくわえても弾かれてしまう。
    ロナルド君には服が溶ける程度だが、彼を抱き締めるために粘液に触れた私には硫酸でも掛けられた様な熱さが身体中に走った。

    「おいで、大丈夫だから……ぐ、う゛!」
    「や、だ…死んじゃ、ドラ公が死んじゃっ」
    「……死なないよ、落ち着きなさい」
    「え…………っ?」

    懐に忍ばせていた銀製の十字架を瘴気の混じった粘液に向かって投げ込み、偽りの願望機と化した聖杯を見つけた。

    「ぐ…………ふ、ふははは、私の方が一段上だったようだな、これで終わりだ!ロナルド君、いまだ、叩き込んでやれ!」
    「ッ!おらああああああっ!!!」

    この私が次の一手を用意していない、なんてある訳無いだろバーカ!




    完全に塵化させ、一粒残さず瓶に詰めたので後はVRC行きだろう。
    あちこち痛い私にぎゅうぎゅう抱きつくロナルド君は可愛いんだけど、あ、痛い、凄く痛い。

    「ひっく、ば……か……やろ……」
    「ごめんね、泣かないで」
    「なんで、なんでおれ、死なないんだぞ!ばか、ばかドラこぉ!」
    「いだだ、ごめんごめんね…君が取り込まれた瞬間頭が真っ白になってしまって……隊長失格だね」

    例え粘液だろうと彼が取り込まれるのは見ていられなかった。
    そもそもロナルド君が取り込まれる可能性を失念した時点で大分頭に血が上っていたのだけど。

    「も……ドラ公、怪我したらだめ、だっ」
    「うん、もうしないよ君が泣いちゃうからね」
    「泣いてねーし!」
    「隊長、取り込み中すみませんが聖杯を壊した際の余波で崩落しかけてます」
    「間違いなく神社陥没するわね……」
    「えっ?えっ?おれ、やり過ぎた?えっ?」

    ああー……ガス爆発って事にしちゃ駄目?







    結果として、聖杯は破壊された。
    念の為にお祖父様を呼んで復活の兆しや聖杯を破壊した後の影響を調べて貰っている。
    ちなみに、取り込まれた方のロナルド君はぴんぴんしてるのに私の方が少しダメージが残っているので数日入院する事になった。

    「ドラ公これ食べるか?こっちもあるぞ!」
    「食べる、食べる、食べるからちょっと落ち着こうね、君のパワーじゃ林檎ぐしゃってなるよ」
    「…………林檎がウサギになった!ドラ公すげぇ!こっちも!こっちも!」
    「怪我人なんだけどな私……はいはい、林檎でも何でも剥いてあげるよ」
    「ヌンヌンヌー!」
    「はいはいジョンにもね」

    ロナルド君は私から離れたがらないので実家の権力を使って特別室を押さえた。
    ちなみに入院の知らせに飛んできた両親にロナルド君にあげた留め具を見られたのでお父様は情緒が乱高下してたし、お母様には神社の一件で泣かれてしまった。
    でもちょうど良かった。

    「……ロナルド君、そこに座ってお話を聞いてください」
    「はい…………俺、何かした?」
    「違う違う違う、大事な話だからね……近い将来吸血鬼になるので私と結婚してください、お願いします」
    「へ…………」
    「もう一度言います、一生一緒にいてほしいので私と結婚してください、宜しくお願いします」
    「………………………………?」
    「もう一回言う?」
    「…………なっ、えっ、だ~~~~っ?!」
    「あ、良かった聞こえてるね」

    お付き合いしてください、をすっ飛ばして求婚したのだ。ロナルド君はぽかん、と口を開けた後に意味がわかった途端に顔を真っ赤にさせた。

    「だだだ、だってお前……ちょっと前に吸血鬼にならない、って……う……え……?」
    「うーんちょっと違うな、今は吸血鬼になる必要性が無い、って言ったんだよ」

    お母様の件があったから執着するものは見つけない、だから永遠に生きるつもりも無いって決めてたのにロナルド君と初めて公園であった時、全部ふっ飛んじゃったんだから。
    準備がすんだら吸血鬼になるよ、って本当は前から言いたくてたまらなかったんだけどね。

    「なん、で……?」
    「そんなの君を愛しているからに決まっているじゃないか、ずっと前から決めてたんだよ」
    「ずっとって……?」
    「退治人組合から無理矢理引き抜いて、うちに引き抜いた時から……いやいや家族だって言った辺りだな、君を手放したくないし、私が死んだ後に君だけ残すのは絶対に嫌、ずーーーっと君の事独占したいから」
    「え、えええええ?だ、って、そんな素振り……」
    「もうね、君の危なっかしいところも、強がる癖に甘えん坊なとこかね、全部ぜーーーんぶ可愛いの、愛しちゃってるんだよ、知ってるでしょ?」

    じゃなきゃ棺だって用意しないし、ジョン以外招き入れた上に一緒に暮らすことを許したりしない。
    全部君だからこんなに好きになって、離したくないんだけど。

    「……俺、が理由でお前の一生縛って良いの?嫌になったって、元には戻せねえんだぞ……?」
    「寧ろ私が囲い込みしてるんだけどね…ねえ、ロナルド君が私の横で楽しく笑って、たまに喧嘩して…ずーっと幸せになってくれたら嬉しいんだけど」
    勿論、ジョンも一緒にね
    「ドラ公、これぷろ、ぽーずしてる……?」
    「うん、これプロポーズだからね?!……じゃあ改めて、私の伴侶に、これからもずっと家族になってくれますか?」
    「………………なる、伴侶も家族もぜんぶなる……なる……っ」
    「良かったぁ……ほら、心臓凄いバクバクしてる」
    「ほん、とだ…俺、お前の事好きになって良かった……ずっと一緒なんだ、すげぇ……凄い嬉しい」
    「ーーーーーーーっああもう私のロナルド君がこんなに可愛い!愛おしい!愛してる!」
    「お、俺だって好きだよ!あ、ああああいあい、……あい、してる……」
    「ああもう今すぐ式挙げたい、ロナルド君が私の伴侶だって世界中に自慢したい」
    「~~~~~~っ」

    あ、またボンって顔真っ赤になったぞ。
    可愛い可愛い私の吸血鬼ロナルド、どうか末永く一緒に永遠を共にしておくれ。





    完ヌン
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