冨岡さんが倒れたのは、不死川さんの葬儀を終えてからちょうど一週間後のことでした。
「おはようございます! お加減はいかがですか、冨岡さん!」
シャッと音を立ててカーテンを開けると、冨岡さんは部屋にさし込む朝の眩しさに目を細めます。
「今日は良いお天気ですよ」
「そのようだな」
柔らかな目元にはうっすらと浮かぶクマ。
「神崎には面倒をかけた」
すまない。申し訳なさそうな、静かな声が病室に響きます。
特別に親しい仲じゃなかった私は最近まで知りませんでした。水の柱であったこの方がこんなにも優しく、そして、悲しそうに笑むということを。青い瞳でベッドに横たわりながら窓の外にある高い空を見つめています。
朝の挨拶を終えて話すことがなくなり静かになると、窓の外から話し声が聞こえてきました。口元で息を白く曇らせながら診療の開始時刻を待ち、蝶屋敷の外に並ぶ人達です。
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