かっちゃんと誕生日今日は僕の誕生日だ。かっちゃんから一緒に出かけないかと誘われた。僕は今、待ち合わせ場所の駅前にいる。時計台の下にいるけど、まだ彼は来ていないようだ。
「出久!」
聞き慣れた声に振り返ると、そこにはいつもよりおしゃれをした勝己がいた。
黒のタートルネックセーターがかっこよさをより際立たせている。
「…待ったか?」
「ううん、全然!今来たとこだよ」
走ってきたのか、勝己の額には汗が滲み出ている。その様子が少し可愛く見えた。
「そうか。ならよかったわ」
そう言って微笑む彼の顔を見て、思わずドキッとする。こんな風に笑うんだ……。普段学校ではあまり見せない笑顔だった。
(な、なんだこれ……胸がきゅんってする)
「じゃあ、行くぞ」
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