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    朧気(おぼろげ)

    @vague23

    ツイのメディア欄が絵以外の画像で埋まってしまうのでこちらにも描いた絵を上げています。描き途中の進捗とかも。
    絵だけ見たいときにどうぞ。

    ホラー好き。最近はゲームのカリギュラとモナークに熱中。

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    朧気(おぼろげ)

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    離人感が強く現実感が持てない部長♂が笙悟と出会って好きになり勢い余って告白する一人称文。笙悟の影が薄い。

    R-18笙主♂漫画のプロットとして書いたもの。
    漫画も描き進めているもプロットとは違った感じになりそうだったので供養。
    プロットだし分かればいいやと雰囲気重視で書いたのでなにもかもメチャクチャです。すみません。
    続きのR-18部分は恥ずかしかったので載せてせてないです…。

    笙主♂プロット膜が包んでいる。
    それは俺をこの世界から隔離していた。
    すりガラスのような膜は全てを遠くのものにさせた。

    皆と話しているのに自分が話しているように感じられない。
    ご飯を食べているのに自分が食べているように感じられない。

    膜越しに見る皆の顔はぼんやりしている。
    話す言葉は質の悪いスピーカーから漏れ出てるようにくぐもって聞こえ、現実感に欠けた。

    ただこれでもちゃんと感情はある。
    困っている皆を見ると胸が痛むし、共感だってできる。
    だけどこれは別の人が感じているもので自分のものではないような変な感覚が同時につきまとった。


    あのときだってそうだった。
    入学式から逃げ出してほどなくデジヘッド達に追われていたとき。
    周りの景色は曇り、アリアの声もエコーがかかっていて全てが他人の出来事のように感じられた。

    その中であの人の声と姿ははっきりとしていた。俺を呼ぶあの人の声が聞こえた瞬間が、膜を破られた初めての瞬間だった。





    「おい、大丈夫か?」
    「え。う、うん……」

    やってしまった。
    キスしているときにぼーっとししまうなんて。相手に失礼だ。

    「なら、良いんだが」

    ソファーに一緒に向かい合って座っていた笙悟も戸惑っている。
    それもそうだ。

    「笙悟が好きだ。その、恋愛感情として」

    そう告白してきた方がこれだけ淡白な態度を取るのだ。戸惑うだろう。





    結局帰宅部に入ったあとも膜は破れたままになることはなく。それからも俺は膜に包まれ続けた。

    しかし見も知らぬ俺を助けてくれた笙悟に対して親愛の情は募っていく。その感情でさえ他人事のように感じられたが。

    そんなぼんやりした日々を重ねていった今日は、俺と笙悟は二人で音楽準備室に残って帰宅部の今後の活動について打ち合わせをしていた。帰宅部メンバーがまた一人増えたためだ。

    陽光を背に真剣な表情でこちらを見る笙悟はあの日を彷彿とさせた。
    初めて出会った日。笙悟が俺を助けてくれた日。初めて俺の膜が破れた日。

    そう思うとまた膜が破けて、世界と俺の間の隔絶が少し無くなった。
    瞬間、他人事として漠然と抱いていた笙悟への愛情が明確な輪郭を描いて俺のもとにやって来た。
    そして衝動的に口に出してしまったのだ。

    「笙悟が好きだ。その、恋愛感情として」

    驚愕で固まった笙悟の表情でまた膜に包まれる。周りが朧気になる。
    俺は水中にいるんだろうか。景色も音も全部が不明瞭だ。

    曇った膜をはさんで見える俺は珍しく相手の話を遮って喋り続けている。

    笙悟への想い。自分の過去のこと。自分を包む膜のこと。
    全部を話してしまっていた。
    誰にも話さないと決めていたのに。

    俺の背中越しに見える笙悟の顔は困惑している。当然だ。
    こんなことを一気に言われても困るだろう。
    それに現実でも未成年の男だ。絶対に拒絶される。以前の関係にも戻れない。

    視界がさらにかすむ。音はさらにこもる。感情はさらに鈍くなりぼやける。
    俺は分かった。
    この膜は自分を守るためにあるのだと。

    「……笙悟?」
    「俺はなにやってんだろうな」

    俺は笙悟に抱きしめられていた。
    なにをやってんだろうなってなんだよと他人事のように囁やけば、笙悟は俺の肩に埋めていた顔を上げる。
    なにか覚悟を決めたように俺の瞳を見据えると、ゆっくりと口付けてきたのだ。俺の唇に。やさしく、労るように。

    自分の足が地面についてない心地だった。
    世界の全部が霧にかかって重力も消えて地面は波打っているような。
    俺は生きている感覚すら遠くへ離していたのだった。大きな衝撃から自分を守るために。

    「えっとな……」

    なにも反応せず彼方を見つめる俺に笙悟は頬をかいている。
    そりゃそうだ。告白してきた方がそんなんじゃ笙悟もたまったもんじゃない。

    分離した俺は準備室の出入り口に立ってもう一人の俺を見て言った。

    「ここじゃ場所柄話しづれえし、俺の家に来るか」

    俺はもう完全に意識をよそへやった。
    その後の笙悟のあとをついて外を歩いてるときの記憶は朧気だ。
    自分達が帰る姿を監視カメラから見ているように感じたことしか覚えていない。


    そして今に至るのだ。
    笙悟の家に着き、ソファーに向かいあって座って、再びキスをした今に。


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