凌牙に丸め込まれるⅣの凌Ⅳ熱い舌が無遠慮に口内をまさぐる。突然水中に投げ込まれた子どものように息継ぎの仕方が分からなくなって、Ⅳは凌牙の胸を押し返した。
不満げに眉を寄せる気配がする。後頭部を支える手に力が入ったのを察し、負けじとさらに力を込めて身体を突き返した。
このままだと呼吸ができず死ぬ。Ⅳはサメでも熱帯魚でもないから、目の前の男と違って空気なしでは生きていられないのだ。
凌牙は珍しく早々に負けを認めたらしかった。最後にⅣの唇をちろりと一舐めし、名残惜しげに唇を離す。やっと口を開放されたⅣは、待っていましたとばかりに大きく息を吸い込んだ。頭がくらくらしている。半ば酸欠状態だ。いつもこうなのだった。凌牙に唇を押し付けられる度、毎度IVはこうして苦しい思いをする羽目になる。他にやりようはあると頭では分かっているのだが、いざとなると何故だか息の仕方を忘れてしまうのだ。
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