それは何気ないひとときの、ほんの一瞬の出来事だったと思う。
シュウとオレは2人、映画を見ていた。シュウがソファであぐらをかいて、俺はその下にもたれて。たまに見上げると視線を感じたシュウが上から「?」という顔で見下ろしてくるのが楽しかった。
「ごめん、ちょっとトイレ〜」
立ち上がって一歩動いたら一瞬立ちくらんで、視界がぐらっと揺れた。やばいと思ってしゃがみかかる。周りのものはよく見えなかったがとりあえず支えをと思って左手を下に伸ばしたら、
「ぅあっ……!?♡」
驚いたでは済まされないシュウの声が聞こえてきた。そして手元が跳ね上がる。やべぇオレもしかしてダメなとこ触った?
揺れの収まった視界を確認するとなんてことはない、あぐらをかいているシュウの膝に手をついていた。
「ちょっと立ちくらみが来て、ごめん」
「ううん、僕もちょっとびっくりしちゃった。いってらっしゃい」
送り出されるままトイレに向かい、用を足す。頭の中はずっとさっきのシュウの声だった。びっくりしただけ?本当に?いやいやまさか。ピュアリティスコア28点以下をナメるなよ。
戻るとシュウは映画を止めて待っていた。またあぐらをかいている。真相を確かめるべくオレはシュウの隣に座った。
「?おかえり」
「うん、タダイマ」
と、同時にシュウの膝をツン、と触る。ビクリと身体が動いた。うん、これはもうほぼ確定でいいだろう。
「シュウ」
「な、何?ミスタ」
そのまま膝をクルクルと指で軽くさすると「っ、…!?♡」と、声こそ出ないもののなんともそそる表情が浮かぶ。少し長めのハーフパンツの布の上からでこれだ。オレは楽しくなって手を伸ばし、直接肌に触れられる脛からそのまま膝へとツツツ…と指を滑らせていく。
「、…っ、♡ね、ミスタ…なに……?どしたの…?」
さっきと同じような動きを素肌の上で行う。クルクル。クルクル。……ふむ。
オレは触るのをパッタリとやめてまたシュウの足元へ戻った。困惑するシュウへ「ゴメンなんでもない。続き見よ」と声をかける。
シュウは「???」という顔をしながらリモコンを手に取った。その奥に、恐らく本人も無自覚なほんの少しの期待が見える。
映画の後を楽しみにしながら、オレはポップコーンを手に取ったのだった。