ポロライド風鈴の音、セミの鳴き声、青い空。見渡す限りの田園風景を、古民家の縁側から眺めて、少し生ぬるい風を肌に感じる。
道すがらに買ったかき氷を口にしながら、ふと『暑いな』とこぼすと、──『そうだな』と旅の同伴者が静かに返した。
シャク、と子気味良い音を鳴らす氷を口の中で溶かし、次は同伴者の方にすくって口元に持っていく。氷を差し出された相手は、目を細めてそれを見つめ、一瞬ためらったが──黙って口を開き、受け入れた。
「うまいだろ?」
「………悪くはない。」
ふっ、と口元を緩めるのが見える。どうやら、満足してくれたらしい。
遠くでゴロゴロと音が聞こえる。さっきよりも、風に運ばれる匂いに泥臭さが混じっていて、この後の天気を教えてくれているようだ。
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