いつか帰るところ「───以前より鉄と火薬の匂いが強くなった」
「そして、ヒトは火だけでなく夜闇を照らす方法を手に入れた」
「もう私達は、これまでの在り方ではいられないかもしれない。かつてヒトは理解の及ばないモノたちを畏怖し、祀った。だが今となっては……もう……」
「……い、お前は……、……」
「……父ちゃん?」
いつか帰るところ
冬が終わり、柔らかくなった風が忍田の頬を撫でる。
忍田は山の中腹から、眼下に広がる平野を見下ろしていた。どうやらここが目的地で間違いないようだった。
この山から流れる一本の河川を中心に、なだらかな土地に家々が身を寄せ合うように集まって集落を作っていた。地面は青々とした草で茂っており、田畑は豊かに広がっていた。
9695