追放水龍 水国サイド空にはまだ白銀の月が輝いている時間。
夜明けにはまだ遠い。
己の執務室があるフロアへ足を運べば正面入口に招かねざる客の姿があった。
「ごきげんよう。あいにくパレ・メルモニアの業務開始時間まで些か早すぎる来訪な上、貴殿との面会予定はここ数日にはなかったと記憶している。職員にも迷惑がかかるのでお帰り願いたく思うのだが」
侯爵殿。
フォンテーヌで長く侯爵の爵位を持つ家柄。リオセスリ殿が公爵の爵位を賜らなければこの男がフォンテーヌ貴族で一番の地位にいただろう。
「最高審判官、いや悪龍ヌヴィレット! 貴様にはフォンテーヌから出ていってもらう」
侯爵が自信満々に出した書状。
最高審判官のフォンテーヌ追放とその理由が明記されている。
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