温もりをあなたに「なんだ、オルシュファンはいないのか」
「はい、本家での会合のため本日は夜更けまで戻らないかと……」
いつものように近くに来たからとドラゴンヘッドに立ち寄った冒険者ルカは、すまなそうに主の不在を告げる副官のコランティオに拍子抜けした顔を見せた。いつ来ても歓迎してくれるから常にあの席にいるような気がしていたが、砦の指揮官であり四大名家に連なる者である。本国に招集されることもあれば貴族の会合に出席することもあるだろう。
「何かご用事でしたでしょうか?」
「いや、近くにきたから顔を見せに来ただけだ」
ラノシアでいい酒と肴が手に入ったので一杯やろうと思ったのだがあてが外れてしまった。予定も確認せずふらっと来たのだから、まぁこういうこともある。瓶詰めになった魚介の珍味は足が早いわけでもないし、またの機会にしよう。
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