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    悠珂(はるか

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    悠珂(はるか

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    プラトンの愛(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17455097)の続きになります。

    #テシジャン

    無垢な愛は人を殺すテシジャン

    『くっそくっそ惨めこの上ない情けない』
    「はいはい日本語は何言ってるかわかんねーから寝ような〜」
    「本当に情けなさすぎて死んでしまいたい」
    「死なれたら俺が困るから早く寝て治して生きてくれなー」

    まあこんなロックウェルで土砂降りの中お仕事してそのまま帰って寝ればそうなるわな、と冷たい水で絞ったタオルを顔色を赤くしたり青くしたり白くしたりと忙しいテシカガの顔面にのせて黙らせた。
    元は俺の護衛中に豪雨にはち合わせたのが始まりで。とっていた宿に入るなりテシカガは俺の身ぐるみ剥がして風呂に押し込めて身体を温めて下さいと扉の前で濡れた身体のまま見張りをした結果な訳だが。
    風呂ぐらい大丈夫だろうと言ったが…まあ、俺の身に関しては彼らは教会の一件以来敏感らしい。それがどれだけ小さく些細なことであっても。

    「お前は特に過敏すぎんよ」

    以前。テシカガの地雷でタップダンスを繰り広げて彼の深淵を覗いてしまった。
    そして深淵の底のモノと目を合わせてしまった。
    次の日には何事も無かったように何時ものにこやかフェイスをしていたからあれは疲れていた自分が夢だったのかもしれないが、掌に寄せられた唇の感触と熱をはっきりと覚えている。うん、現実だった。

    「お前のこと未だに理解出来ねぇんだけどさ」

    寝息すら息してんのかレベルで静かなテシカガを眺める。起きてる?いや寝てるはず。俺が寝ろと言ったら寝るやつだ。

    「黒い、な」

    東洋人特有の真っ黒なさらりとした髪に指を通す。こんな機会なければこいつを観察することなんてないなと、サイドテーブルに置いた眼鏡を取ってまじまじと見たりかけてみたりとまあ普段出来ない事を楽しんでいる自分がいる。
    あ、これ度が入ってねぇ眼鏡だ。

    「お前分からんことだらけだな」
    「そんな、ことないですよ」
    「あ、わりぃ起こしたか」
    「あまり、眠りは深くない方なので」
    「ほーん…?」

    てことはやってたこと全部分かっててされるがままだってことだ。ますます分からねー。

    「あのさぁ」
    単純な、疑問、
    逆にどこまでなら許してくれるのか、
    そう、ただ、個人的な、興味の範囲だった。

    「おまえ、どこまで俺に許せるわけ?」
    「は?」

    いつもの細い目がこれでもかと開いて、灰色の瞳とかち合う。
    雨に濡れて冷えて火照り衰弱している身体ではいつものように立ち回れないのだろう。
    だからほら、俺がベッドの空いてるところに腰掛けて、顔を近づけても固まったまま動かない。

    「前から思ってたんだよ。お前、俺でも誰が相手でも近づいたら一定距離は絶対に離れるだろ。間合いでも測ってんのか?」

    いつもの距離感が0になった謎の優越感は何だろうか。彼の入れてくれない場所に入り込んだ、入ってやった。

    「ちか...いです。あの、日本人にこの距離感はかなり宜しくないです」
    「お前こんなところで慎ましやかさアピールやめろよ。慎ましさと真反対の位置にいるんだからさ」
    「あの、ほんと、ちょっと、おれ今結構あたま回ってなくてですね、」
    「だろうな、俺お前とこんなに近いところで喋った事ねぇもん」

    ぐいぐいと押し返される腕に力が全然入っていない、あまりからかいすぎるとさすがに熱悪化するか、と勝手に満足した離れようとした時、

    「わ、ちょっ...!」

    押し返された手に腕を掴まれて強い力でベッドへ倒れ込む。

    「だから言ったのに」
    「な…に、が」
    「忠告しましたよね、あたま、回ってないんです」

    視界の中に古びた天井と先程勝手に触った黒、背中にはぬくいシーツ。
    頬に添えられるひどく、熱い、てのひら。

    「自分もあなたが分からないんです。手の届かない遠い存在でいてもらわないと自分は、俺はこうやって貴方を傷つけそうになる」
    「…ひっ、」

    添えられた掌が、指が、唇をなぞる。
    ぞわぞわとした背筋に身体が強ばり緊張が走る。
    弱ってる状態のテシカガ相手なら力負けしないと思うのに、身体が動かない。弱ってても俺より馬鹿力なのか?いやいやいやそんなことを考えてる場合では無いが、脳が別の方向へ思考を持って行こうとする。

    「俺のおねがい、覚えていますよね?」

    お願い、あの時の
    『俺の望みは、テシカガ・キリヒトとして、ジャンさんの目の前で死にたい。あなたの瞳の中で息絶えたい』
    外してはいけない鉄仮面を外した、あの日。

    「あの、時の...でも、お前、何も無かったみたいな態度してたから」
    「仕事と私情は流石に分けますよ。…本当に、貴方は人の触れてはいけないところを遠慮なく触ってきて、俺は振り回されっぱなしなんです」
    「それ、は…悪いとは思ってる。悪い、たぶん」
    「?」

    ここまでテシカガにちょっかいを出す理由。自分でも答えを見つけられなかったが、何となく腑に落ちた答えが見つかったような気がする。

    「俺はお前が知りたいし、お前がどこまでちょっかい出したら俺に本性出すのか、試しているんだと思う。…あの日からそれをもう一度みたい自分がいるんだ、きっと」

    テシカガの本性がもう一度みたい自分がいる。
    そして何をされるのか期待してしまっている自分がいる。
    おかしいだろう、笑ってくれて構わないさ、自分でも夢みたいなあの日が忘れられないんだよ。

    「……なるほど、つまり自分は遊ばれていると」
    「何をどう解釈したらそうなるんだよ。ネガティブ過ぎねぇかそれ」
    「生い立ちのせいですかねぇ」
    「じゃあ、それでいいよ。俺に遊ばれるテシカガくんは俺にどう仕返ししてくれるわけ?」

    挑発する言動で押し倒されている身にも関わらずにやりと笑った。

    「…腹、括ってくださいね」
    「上等」

    俺は、自らの意思で彼の地雷を踏み抜いた。

    そして案の定、俺も熱を出してニコニコなテシカガに看病されましたとさ。



    無垢な興味は人を殺す
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    悠珂(はるか

    DONE急ぎで書いたので文字荒いですが2023年ランドルフォ誕生日記念に。
    ひよもくで配布していたゲーム、悪卵の軍パロです。ゲーム未プレイだと分からない要素しかないです。
    ランディとテシのひそひそ話。
    (ひよこ→ジャン含)
    時間軸的にはみんなジャンに拾わて一定期間経ったくらいのお互いに均衡を保ってる時。
    壊れてるくせに愛を語るか壊れていたのは、俺。
    その現実から目を逸らしていたのも、自分。
    いつも通りの俺っちとして過ごしていた、ランドルフォ。
    どれも自分だった。自身が忘れてしまっただけで。

    俺は、貴方に見つけてもらう直前に、銃口を向けられたあの時に。
    全てに絶望し、壊れたのだ。
    自分の不甲斐なさ。情けなさ。生き残った後悔。懺悔。罪悪。
    すべてに押しつぶされ迫る死に己が取った選択は、自己心の破壊。
    だから笑った、びびりな自分が笑って死を受け入れた。
    壊れた人だったものが物言わぬものになる瞬間を笑い飛ばした、その時だったのだ。

    「かみ?ああ、神ね。違う違う。どちらかっつーと死神じゃね?」

    壊れた自分に貴方は希望を与えてくれた。
    だから、自己破壊に上回る程の輝きと奇跡に自分は、壊れたことを無かったことにしてしまったのだ。
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