お召し物が!! マトリフは大欠伸をしながら脇腹を掻いた。治りかけの傷口が痒くて仕方がない。寝台の上で持て余す時間のせいで自堕落に拍車がかかっていた。
「大魔道士様」
控えめなノックの音と共に呼びかけられる。いつも身の回りの世話をしている神官だろうと、マトリフは間延びした返事をした。
すると入ってきたのは見慣れない神官だった。背が高く眼鏡をかけている。生真面目そうな表情で、部屋に入った途端に直角にお辞儀をした。
「包帯の交換に参りました」
おそらく新しく入った神官なのだろう。緊張しているらしい。
「おう。頼むわ」
マトリフは寝台で起き上がれない期間が長かったせいで、包帯の交換のために身体のあちこちを見られることに慣れていた。どうせなら美人の姉ちゃんにやって貰いたかったが、実際は揃いも揃って冗談も通じないむさ苦しい男ばかりだった。この神官もきっと同じだろう。
1111