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    双子ハリらしい雰囲気を目指して書いたらシリアス風味に締めちゃってびっくり。でも直さない。双子ハリらしくなったと思うから。

    夕暮れのティータイムの空想 珍しい光景もあったものだ。和やかな談笑と共に傾けられる華やかなカップを目にした時、ハリーはそう思った。
    大きな暖炉の中で燃える炎のお陰で、グリフィンドールの談話室は冬でも暖かく、快適で過ごしやすい。寮生達が寛げるように並べられたソファやテーブルの周りには仲の良い友人同士が集まってゲームをしたり、一緒に勉強をしている姿で賑わうのが日常だ。
    着替えを済ませてドミトリーから降りて来たハリーは、いつもの光景が広がる居心地のいい談話室へ足を踏み入れた途端、感じた小さな違和感に、おや?と目を引かれた。それは間違い探しの答えを見つけた時のようなほんの少しの感動と、興味を持たせるには十分な光景で。ハリーはつい違和感の元凶をじっと見つめてしまう。

    「そう熱心に見られてると落ち着かないな」

    繊細な花柄模様は優美で、縁取りを金色に塗られた豪奢なカップへ触れていた唇がハリーの見ている前で緩やかに微笑んだ。ソーサーへ戻されるカップが微かに立てる陶器の触れ合う音に意識を戻され、ハリーは自分が不躾な視線を彼らへ向けていたことに気付いて申し訳なさに首を竦めた。
    しかし当の本人たちと言えばじろじろと見つめられていたことに気を悪くした様子はなく、優雅とは表し難い悪戯な笑顔をハリーに寄越した。

    「どうかな。結構、サマになってると思うんだけど」
    「ハリーのその顔を見るに、大分、いやかなり、キマってたな俺たち」

    調子のいい仕草で髪を払うジョージに対し、フレッドは長い足を組み替えると顎下に手をやってポーズを取る。わざわざ椅子を引いて全身を見せ付けながら披露されるそれに、ハリーはつい噴き出した。「とっても素敵だったよ」と答えるハリーに「良ければ一緒にどう?」とフレッドが杖を振る。返事も待たずに追加される一人分のティーカップは双子が囲む丸テーブルの上まで飛んできて、カチャカチャと軽やかな音を鳴らしながら独りでにお行儀良くセットされた。
    正直言うと、不自然に上品なティータイムを興じている双子と同じテーブルへ着くのには抵抗がある。けれど、既にポットが宙に浮いてハリーが椅子に座るのを今か今かと待ち構えている様子に仕方なく、ハリーは新しくカップが置かれた席に腰を下ろした。

    「やっぱりこれって、なにか変じゃない?」
    「まあね」

    訝しんだままハリーが席に着いたのを合図に、傾けられたポットから注がれる琥珀色の液体がカップの底でぐるりと渦を巻く。湯気と共に立ち上る紅茶の上品な香りをハリーは楽しんだ。

    「近いうちに、あっちこっちで商談の機会が増えるようになるだろう?」
    「そうなると、あまりにお粗末じゃあ締まらないからな」

    淡いピンクの花弁が可愛らしい、薄い緑の線がアクセントのカップを傾けて一口。甘くて後味のすっきりした味の紅茶にハリーはほっと息を吐いた。

    「もうそんなことまで考えてるんだ?」
    「もちろん。俺たちの店ができた時にはぜひ見に来てくれよな」
    「その時は、俺たちで君をエスコートしよう。
    あまりの紳士っぷりに君はきっと惚れ直しちゃうんだろうなぁ」

    そう言うと二人は思い描いた未来の出来事を想像してむふふと笑う。紳士はそんな笑い方しないと思うよ。とハリーも笑いながら、彼らが店を構えた姿を思い浮かべる。そこはきっと、笑いの絶えない素敵なところ。
    そして、そこへ向かう自分もまたきっと幸せそうに笑っているんだ。

    夕暮れのティータイムに思い描いたそれぞれの未来の光景は幸せに溢れていて、訪れてもいない先のことを予見するのは難しいのだと、この時の僕らはまだ知らなかった。


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