中佐と結婚した。したのだ。夏の初めに2人で有給を取得し、役所に書類を提出した。たった紙切れ一枚。されど紙切れ一枚。
ムンゾの役所に行けば自分たちの婚姻関係を示す書類も引き出せる。というかエグザベ自身も未だに現実とは思えず、週に一度ほどの頻度で自分のIDの写しを発行しては配偶者の欄にシャリアの名前が刻まれているのを確認している。
そう、厳然たる事実として、自分エグザベ・オリベとシャリア・ブルは婚姻関係にあるのだ。
「エグザベ君」
シャリアの左手の薬指にきらりと指輪が光る。エグザベの左手にはめているそれと揃いの指輪はいわゆるマリッジリングというやつだ。シンプルなプラチナ製の円環には宝石どころか飾り一つ付いてない。それでも資源の限られた宇宙ではこの指輪はかなりの高級品である。シャリアは華美な装飾は好まない。それならばシンプルでも質の良いものをと考えるのは自然なことだろう。愛する人に贈るのだから、妥協はしたくなかった。
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