「ウソップ、誕生日おめでと」
朝、寝室から出るとナミと鉢合わせた。まだ半分寝ている寝ぼけ状態のウソップは、顔を合わせるなりナミからそう声をかけられ、歩みをぴたりと止めた。
そうして数秒その言葉をゆっくりと噛み砕いてから「今日おれ誕生日か!」と表情をぱあっと明るくし、口角をあげる。ナミはしょうがないわね、とばかりの表情で腕を組んでいた。
この麦わらの一味でまず最初に誰かの誕生日を祝うのはナミだ。航海士という役割柄、日付も意識するし、新聞だって読む。日付けの話題を出すのだっていつだってナミだ。そしてナミは誕生日祝いの言葉をかけるとき、絶対にふたりきりのときに声をかけてくる。まるで、日付を意識している自分の特権かのように、誇らしげに声をかけてくるのだ。ウソップは、年に一度見ることのできるナミのその顔を見るのが好きだ。最初にストレートに誕生日を祝う言葉を送ってくれるナミの表情が好きだ。
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