夜に世を詰めて「あら、爪を切っているの?」
穏やかで静かな夜の海に、鈴を転がしたような声が響く。
ロビンが風呂上がりの体を冷ますため、甲板に出てきたようだった。ドライヤーで乾かした黒い髪を夜風にたなびかせながら、ハンドレールに体を預け海を見据える。
「おお、ロビン!そうだぞ!」
太陽を船主に海を渡り歩く帆船の船長は、今夜甲板で一人何かをしているようだった。
日はとうに沈み、仲間で囲んだテーブルの喧騒も遠い岐路へ置いて行かれた時間である。普段夕食を済ました後は、もっぱら仲間と共に過ごしているルフィが真夜中に一人でいるのは珍しい。ひとつまみの違和感に興味を持った学者は、研究対象と会話を試みてみた。
「ルフィ、いつもナミやウソップに爪を切ってもらってなかった?伸びすぎてどこかひっかいてしまったの?」
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