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    ringe_duck

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    ringe_duck

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    ケシエイSS 連載のつもりの続き。
    今回はむしろエイト+トパwithケシーな図。糖分少ない……?
    単体でも読めます。最後はエロに繋げたい頑張る。

    誰が駒鳥を××したか(03)「おっ、そうだ。今日はトパにいい物持ってきたんだった」

     エイトの声が響いたのは、何気ない会話の途中。思い出すのも馬鹿馬鹿しいような、そんな話題の合間でのこと。
     いや、一方的な声と気まぐれのように返される相づちを果たして会話と呼んでいいかはともかく。下げていた己の荷物を漁り始めるエイトに、名を呼ばれたトパが反応する。
     ケシーの肩からエイトの胡座の中へ。それから、オヤツをくれるのかと期待し、手元を覗き込んだ瞳に映るのは、灰一色の物体が一つ。
     エイトもケシーも、それがブラシと呼ばれることを知っているが、トパにとっては食べられないものとしか認識できない。
     鉄製の取っ手に、同じ素材の小さく長い突起が複数。
      匂いを嗅いでも当然匂いはせず、チ? と首を傾げる姿はどこがいい物なの? と言わんばかり。

    「ほらトパ、おいで~……って、あ!」

     小さな身体を下から持ち上げ、では早速と背中にあてがった途端にスルンと抜け出す軟体。手に残るのはふわふわな感触と僅かな温もり。
     ここに居てほしかった存在は、早々に巨体を駆け上がりいつもの定位置へ。心なしかその目は威嚇しているように見えるが、つぶらすぎるせいで怖くもなんともない。
     いや、むしろ怖がらせたのはエイトの方だ。

    「トパ、大丈夫だって。なんも怖くないから……。これすると、もっとフワフワになれるんだぞ~」

     ほら、とブラシを振っても威嚇は止まず。確かに、ケシーはこの類の道具は使わないだろう。初めて見るものに恐れるのは、生き物として当然のこと。
     エスターがペットのモモに使っているブラッシングの道具。
     毛並みが良くなる、と聞いて小動物にも使えるか確かめ、普段使用していない予備を拝借し……と。そこまではよかったが、やはり抵抗はあったようだ。
     もしかしたら、使っていないとはいえ匂いが染みついていたのかもしれない。
     自分より強者の匂いがする異物。それも、あまり懐いていない相手から差しだされた物なんて、警戒しない方がおかしい。
     毛並みを整えたいのはエイトの我が儘であり、怖がらせてまで無理強いする必要はない。大丈夫そうなら試したかった、ただその程度。
     だからこそ、ダメかと苦笑し鞄に戻すことに名残惜しさはない。
     怖がらせたお詫びにオヤツでも渡そうかと、再び鞄を漁ろうとして……ぬ、と差しだされた手に一つ、瞬き。

    「……貸して」
    「へ? ……え、あ。ああ」

     言われるままに、もう日の目を見ないと思っていた道具はエイトからケシーの元へ。
     肩の上の存在を、片手で掴む動作は手慣れたもの。前足の後ろから手のひらで支えてやれば、垂れ下がった足と尻尾は脱力したまま。
     ス、と通されるブラシに絡まる数本の毛。触れていると認識しているはずなのに暴れることも、怯えることもないのは、ケシーにされているからこそか。

    「……ん、」
    「え?」

     三度ほど繰り返され、眺めていたエイトに差しだされるトパ。チチ、と鳴く瞳は見上げはしても、逃げることはないし、その素振りもない。

    「同じように持って。力は入れなくていい」
    「え、あ。……う、うん」

     言われるまま受け取り、脇の下を支えるように指を変える。ケシーがしていた時はそう重く見えなかったのに、伝わるのはそれなりの重量。
     と言っても手が疲れるほどではなく、続いて渡されたのは貸したばかりのブラシ。

    「やってみて」
    「でも、嫌がらなかったか?」

     今は暴れられる体勢でないから大人しいだけで、またエイトが試みれば意地でも抜け出そうとするだろう。
     無理を通してまでする行為ではないし、エイトもそれは望んでいない。

    「嫌そうに見えた?」

     ……だが、ケシーから返されたのは同じく疑問。エイトに答える事なく、トパの口元に運ぶのは小さく千切った何か。
     器用に口と舌で舐め取る姿は、緊張よりもリラックスしている印象を受ける。そのまま、そっとあてがったブラシを優しく下ろしても、その態度は変わらない。
     背中から尻尾へ。ひっかかることなく滑り落ちるブラシは、その度にいくつかの抜け毛を溜めていく。
     慎重な力加減の犠牲になるのはエイトの言葉。スルスルと滑り落ちるブラシの音に紛れるのは、次々とオヤツをもらってご満悦なトパの鳴き声。

    「……ん、もう下ろしても大丈夫」

     言われるまま、支えていた小さな身体は元の体勢へ。
     胡座の外に戻したはずのトパは、ブラシで取れた毛量に驚いている間に再び中へ入り込む。
     チ! と。一際大きく鳴き、それから怖がっていたはずの物体に頭を擦りつける光景に戸惑いと喜びが混ざり合う。

    「お、おぉ……? なんだ、気に入ったのか?」

     試しに背中へあてがえば、心地よさそうに細まる目からも間違いない。ガッサガサと抜けていく毛は少々恐ろしいが、無理矢理抜いているわけでもなし。
     気に入ったなら問題ないと、尻尾も丹念にブラシ掛けを行っていく――途中で、ふと視線を上げる。
     エイトたちを見ている男の表情は変わりない。
     微笑んでもいないし、呆れているのでもない。淡々と眺めるそれは、無関心にも、ただ眺めているようにも見える。
     ……だが、見つめる琥珀は。その二つの瞳は、どこか柔らかいもの。

    「……なに」
    「あ、いや。手伝ってくれてありがとう」
    「……別に」

     その返事も、態度も変わりない。変わりないはずだ。
     本当に嫌がったなら止めたと。手助けする必要もなかったと。言葉にされなくとも、そう考えていると予測できることも同じ。
     単にトパの喜ぶ姿が微笑ましかっただけだろう。長い付き合いでも、ここまで脱力する姿は見たことがなかったのかもしれない。
     そう、だから……この感覚は、きっと気のせい。
     ――そわり。
     直接撫でられたような胸の違和感。誤魔化すように動いた指は、自然と尻尾を撫でる形に。
     過剰なまでに整えられたそこは期待通りに柔らかく。されど、なぜか落ち着かず。
     ただ、ぎこちなく撫でられても喜び、チィと鳴く存在がいることに……エイトはなぜか、安心したのだ。
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