「おれは君のものなので」「ヴィクトル、何か怒ってる?」
意思の強そうな眉を少しだけ下げた恋人がそう声をかけてきたのは、誰もいなくなったチムピオーンのリンクサイド、帰り支度が終わり荷物を背負ったその瞬間だった。
「え? 急にどうしたの?」
心あたりがなさすぎたおれは首を傾げる。今日の練習で厳しくしすぎたかと心配していると、予想に反して頬を染めた――すっかりオフモードのユウリが、唇を尖らせながら言葉を紡いだ。
「だって……最近、ヴィクトルからハグとかキ……スとかしてくれないから、僕、何か変なことしちゃったのかなって……」
「――それは、」
紆余曲折を経て、おれとユウリが「恋人」として付き合い始めたのはつい最近のこと。
おれはずっとユウリのことが大好きで、時間をかけて口説き落として、ようやく手に入れた愛しい子だ。手放すつもりなんて、あるはずがない。しかし、そんな中でおれからのスキンシップが減っていることは事実だった。
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