ハッピーバースディ☆キッス「……おい。いつまでそうやって廊下の真ん中突っ立ってんだ。どけし」
夕飯を終えて食堂から部屋へと戻る道すがら、目付きの悪ぃ中坊がふらりと現れ俺の進路を塞ぐ。まっすぐ俺にガン垂れながらスウェットのポケットに両手を突っ込み仁王立ち。先輩に対して取る態度じゃねぇし何より廊下は公共の場所。皆の迷惑になるのがわかんねぇのかこのクソガキは――。
「聞いてんのかコラ亜久津。何か気に入らねぇ事があんなら聞いてやっから、早よ言えし。お前らガキと違って俺は忙しいんだよ」
「……俺に、指図すんな」
チッと舌打ちひとつ洩らし、ずぃ、と距離を詰めて来る。少しばかりタッパが上だからって、見下ろして来る事で威圧感を与えようなどと幼稚にも程がある。一歩も下がらず見上げてやると、意外にも亜久津の瞳には全く敵意がこもっていなかった。
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