狂信者「嗚呼。ガブリエル様。貴方はなんて美しく、神々しいのでしょう。」
優しく微笑むガブリエルに向かって手を合わせ、跪いているのは彼の右腕である侵入者であった。
いつも無表情である彼は、ガブリエルを崇める今だけは笑顔を見せるのだ。ガブリエルはそれに答えるように、優しいほほ笑みを侵入者へ向ける。
「SIX、貴方は本当によくやる子です。私の言ったことを全て上手くこなしてくれる。全て完璧にやってくれる。」
優しい声で、侵入者を本名で呼び、褒める。
侵入者はそれを聞き、口が裂けるのではという程の笑みを浮かべる。目も細め、手の甲に爪がめり込むくらいに握りしめた。そのせいか、彼の手の甲から、血が流れてきた。ガブリエルはその血を拭う。そして指に付いた侵入者の血を舌で舐めとった。
「嗚呼…ありがとうございます、ありがとうございます…。」
喜びの余り、涙を流しながら祈りを続ける侵入者。
ガブリエルは彼の頬を両手でとる。そして柔らかい声で彼に語り掛けた。
「貴方が今から私が言うことを叶えてくれることを信じます。これからもずっと、私のそばにいてください。そして…私を信じてください。」
侵入者はその言葉に深く頭を下げて応えた。
「仰せのままに…。」
ガブリエルは侵入者の頭を撫でると、何処かへと飛び去った。
ー
ガブリエルは真顔で教会の窓から外を見ていた。先程、侵入者に言われた言葉を思い出しながら。彼は段々と顔を下に向ける。そしてがばぁと、音がなるほどの勢いで顔を上げた。
ガブリエルは不気味で異様で異形な笑みを浮かべていた。そのまま窓から遠ざかり、思い出し笑いするようにクククと笑っている。
そして、彼は呟いた。
「私の手足のくせに、あんなに信仰できるとは、笑える。」
彼は、侵入者のことなんてなんも思ってなかった。