ちびデスドラとブレイサ『イサミーイサミー、構ってくれ、暇だろう?構ってくれ、ね?ね?ね?』
「わか、わかった、イーラ分かったとりあえずあのちょ、擦り寄らないでくれ!仕事できないから、こら、ちょっと…パソコンに乗るなってば…ったく仕方ないな…」
パソコンの上でごろんっと丸まったイーラを撫でてやるイサミ。
するとイーラはぴょんっとイサミの膝の上に乗りお腹を見せるように寝転がる。イサミはそんなイーラを撫でてあげながら丸い頬をぷにぷにとつついていく。
その手に擦り寄りぎゅっと握り締めて枕のようにしている。
『ぢょぉっどまてぇええっ!!!!』
「うるさ!!」
『ィィアアぁぁっ?!!!君いったい何をしているんだぁっ!!!!』
「聞いたことない声出してる…」
『何をだって?イサミに構ってもらってるんだよ、暇だから。まったくこんな板切れに構うだなんて、イサミは酷いね。僕がこんなに撫でるのを要求しているというのに…』
「全く猫かお前は」
『ネコ?それが何かは知らないけど今は僕を撫でるのに集中してほしいね』
「はいはい」
あろうことか私のイサミの仕事を邪魔しただけでなく、挙げ句の果てに撫でろと強要するとは一体どういうことなのか。
しかも何故ミニボディでそれをやる、あざとい!あざとすぎる!!それは私とルルと近しい距離でコミュニケーションが取りたいとお願いしてきたスペルビアのためと
デスドライヴズへの抑制で作ったのであって断じてその様な行為のために作ったわけではない!
断じて!羨ましいわけではない!!!!
『うるちゃくてねれないよぅ…』
「おいブレイバーン、ちょっと声抑えろ。イーラが寝れないだろ…俺なら問題ない。別に今すぐ片付けなきゃ行けないわけじゃない」
『しっ、しかしだなイサミ…!』
『ぅーー…』
「大丈夫だって、この体になってるなら敵対意思はないんだろ?片手でもキーボードは打てるしな」
か、かわいこぶってこいつ…!!そんなキャラじゃないだろ!
左手をイーラの枕として掴まれたまま片手で慣れた様子でキーボードを打っていく。
イサミにそう言い切られれば、強くは出られず何かあれば呼んでくれと部屋を出て甲板までダッシュで出る。
『私がぁあああっ!!大丈夫じゃなあぁあああいっ!!!!!』
出るなり海に向かってありったけの大声で叫ぶ。
大丈夫、イサミの部屋はビルドバーン製なのでこの程度はそよ風の様な程度に感じるだろう。
…ルイススミスと分裂しイサミのためにビルドバーンで2mのボディと簡易ボディとしてのミニボディを作ったのに…のに!!(上記の理由もあったためしょうがないとは言えだ)
なんで私はダメなのにイーラはいいんだイサミ!!!
『ちっくしょう…めちゃくちゃ悔しすぎる…!!私だってイサミの膝の上どころか似たことしたら摘み上げられ棚の上に飾られたりベッドの上で寝ていたらそのままベットチェストの上に乗せられたりしたのに…!なぜ、なぜだっ…イサミィイイッ!!!!』
『五月蝿いぞ!何を騒いでおる!』
『スペルビアぁぁっ!!!何故イーラがイサミに纏わりついているんだぁぁっ!!!!??おかしいではないか!!!!!?!!あいつはもろ私達に対して殺意向けてたんだぞ?!なんならっ!!』
『五月蝿いッ!!』
『あいたぁ!!!!』
思い切り裏拳でスペルビアに殴打されてしまいずさーとつ甲板を滑る。
最近誰も彼も私に厳しい気がするのは何故だろうか…。
『イーラは基本的に温厚であろうが、変なちょっかいを掛けなければデスドラ内であれば1、2を争うほど落ち着いた性格である。全くお主は何故そう堪え性もなければ甲斐性も無いのだ!落ち着きを見せぬか!』
『そっ、そうは言ってもだな…!』
『大体イサミのどこが信用ならぬのだ。イサミはお主には厚い信頼を寄せているではないか』
『そ、そうだけれども…!!』
『お主はまず落ち着きが足りなさすぎる、躾されておらぬ犬では無いんだぞ…』
『ぐぬぬぬぬぅっ!!!!!』
恥も外聞も捨ててまるで子供が駄々をこねる様に手足をバタつかせる。
『やだー!!!それでもイサミが私以外を撫でたりするのやだー!!!甘やかしたりするのはいやだっー!!私だけにしてほしいッ!!!』
『きもちわるっ…』
『何か言ったか?!』
『何も言っておらぬ、もう我は行くぞ。あまりイサミを困らせぬ様にな』
そう言って飛び立ってしまった。
そんな、スペルビアそんな…!!
すると大きな影がぬっと覗く様に出てきた。
『五月蝿いと思ったらアンタじゃないのよォ、ブレイバーン。何騒いでんの?』
『ヴァニタス…』
『いやまぁ聞こえてたけどさァ…アンタもう少し節度持ちなさいよね。見栄張りすぎじゃなくってェ?』
『そ、そんなことは…』
『ダメよ言い訳は!アタクシの前では許さないわァ。独りよがりもいい加減になさいな…あんたのあの良心のほぼはあの人間が主みたいだけれどォアンタ自身にもある訳でしょ、あんまりしつこいと本気でイーラとかに乗り換えられるわよ』
『』
『あらやだ…思考回路ショートしちゃった?…ちょっとォ?もしもーし』
ぺちぺちと頭を叩かれる感触で意識が浮上した。
危ない危ない、危うく回路が焼き切れてしまう所だった。
『まっ、頑張りなさいね。アタクシには関係ないけど』
『ぐぬ…』
『あ、忠告しといてあげるけどォ』
『ん?』
『アタクシは優しいから話してあげてるけどォ他の奴らはそうじゃないっての自覚しなさいよォ?怖がられてるってのをねぇ…あとはイサミが素敵で惹かれるやつもいるかもねぇ』
『はっ?!』
『オホホホ、じゃあねェ』
ふよふよとまるで海を泳ぐ魚の様に宙を舞いながらどこかへ行ってしまったヴァニタスを見送り頭を抱える。
確かにイサミは大変魅力的だし惹かれてしまうのもわかるがここまで魅了してしまうだなんて…なんと罪な男なんだイサミッ…!!
■□□
『あらここにいたのねぇ』
「ヴァニタス、珍しいなチビボディなの」
『オホホホ、気分よ気分。この姿でいるとクピリダスが魚見たいな持ち方するのが嫌でなってないだけよォ〜。イーラの回収しに来たの。ブレイバーンが騒いでたから五月蝿くって』
「え?まじで?悪いななんか」
『構わないわァ、このぐらいどうってことないわ。んじゃ貰ってくわねー、お仕事頑張ってねイサミ』
ふよふよ〜と近付いてイーラをそっと持ち上げたのでお礼を含めて軽く頭を撫でてあげるとにこーっとして部屋から出ていく。
ちょっと痺れてきた左手を軽く振りようやくパソコンに向き合う。
ぴょこっと見覚えある角が見える。
「何してるんだ?セグニティス」
『あぅ…イサミはんお助けしてや』
「何事…?」
『ワイほら体大きいやろ?荷物運びさせられそうに…』
「おーしっ、頑張れッー!」
簡易ボディなはずなのに他のデスドラ達よりも大きいセグニティスを抱っこしてあげ部屋に出るとちょうどミユが探しに来ていたので引き渡す。
セグニティスはいやいやと首を振って手足をプルプルさせていたが。
今日はなんだか賑やかというか…逃げ場になってる気がする。ブレイバーンが騒いでいたと言っていたから何かしたんだろうと額を押さえる。
…最近あいつに構えてなかったのも事実だ、仕方ないと思い部屋を出る。
確か格納庫にあいつの部屋が割り振られていたはずだ。
そうしたらまた見覚えある角part2。
「クピリダス」
『ふふ、分かってしまいましたか』
「そりゃな…どうかしたか?」
『遊んで欲しくって!』
「あぁー、悪い。今からブレイバーンのところに行くんだ…後でいいか?」
『大丈夫です、絶対後で遊んでくださいね〜ブレイバーンにも一緒に遊びましょうと伝えておいてください』
ぴょんぴょんと跳ねながら手を振ってぱたぱたとどこかへ行ってしまうクピリダスを見送る。
簡易ボディになるとちょっと幼くなる奴がいる。筆頭はクピリダスとセグニティス、イーラも実はそう。
クーヌスは半分くらい、変わらないのはスペルビアとヴァニタス、ポーパルチープムとペシミズム。
何かしら差があるのだがそれぞれの欲に引っ張られやすい年齢があるのかも知れない。と勝手に思うことにする。
格納庫へ行くと、ブレイバーンがビルドバーンで何か作業している様子だった。
壁をノックすると作業を止めて振り向かれる。
久々に元のデカさのブレイバーンを見た気がする。
「悪いな、邪魔して」
『とんでもないさ、何かあったか?』
「ヴァニタスからお前がなんか騒いでるって聞いたから何かあったのかと思ってな。どうせイーラのことだろ?」
『うぐっ…!いや、そのすまない…取り乱してしまって』
「まぁいいけどさ、肩に乗せろ」
ゲシっと足を蹴り、ブレイバーンの手から肩へ乗り移る。
「心配症だなお前ほんとに」
『…イサミが魅力的なのが悪い、イサミが狙われてる様に思えてならん』
「はぁ?んなわけあるか、みんないい奴だよ。他のメンバーにだって頼られてるし」
『それは、そうだが』
「なんだ?俺はお前だけに頼っておけって?」
『…そうできるならそうしてほしい…くらい…だ、が…』
「無理な相談だな、わがまま」
『うぐっ』
「嫉妬深い男は嫌われんぞ」
『そ、そんなことはない』
「そうかぁ?怪しい〜、ったくスミスと分裂した時はどうなると思ったけどな。お前のままで俺は安心してるんだぜ?」
『へっ』
「ちゃんとお前はお前でいたんだって安心した、俺が信頼してたやつはちゃんとお前だったんだってな。それだけじゃダメか?」
『な、そんなわけないじゃないか!!君の熱い思いに気付けなかった自分が恥ずかしい…』
「…ちゃんと言えてなかった俺も悪かったし、気にすんなよで満足できねーだろお前」
『えっ?!!いやそんなことは』
「お前にしかやらねーことしてやる。だから絶対に騒ぐな、みんなにやられたことを吹聴すんな、俺ら2人だけの秘密な。手」
そう言ってブレイバーンの手のひらに乗り顔の前にまで持って来させる。
これ自分からするの恥ずかしすぎるが、まぁ仕方ない。
不安にさせた俺が悪い、なんでもわかるわけないのに。
想いを常に伝えるのが難しいなら態度で示す。
頬に手を添えて、キスしてやる。
少しずつ熱くなっていく頬をすぐに手を離す。
「わっーたか?」
口をぱくぱくさせて顔が真っ赤になっていき首を首振るおもちゃの様に振っていく。
丁寧に下ろしてもらい、部屋を後にしようとしたが声を掛けられる。
『あ、あのイサミ…なんで小さい私は遠ざけられてしまうか聞いても…?』
「ん?雑な扱い方したくないだけだよ、潰しちゃうし…柔らかいからなんか変な跡ついたら嫌で退けてるだけ」
すると急に勢いよくガッツポーズをしだす。
落ち着けと言っても落ち着かないだろうから、落ち着くまで見守る。
「落ち着いたか?」
『うん…』
「あ、クピリダスが後で遊びたいってさ」
『クピリダスが…?』
「ちっちゃい方な、ブレイバーンとも遊びたいんだってさ」
『ふ、ふむ…?』
「たまにはお前もみんなと話したりしろよ、俺に普段からコミュニケーション大事だって言ってるくせに自分はやらないつもりか?」
『い、いや…それは…』
「ならちゃんとみんなとも話せよ、戦闘のお前しかみんな知らないんだから怖がられるぞ」
『そうだったのか…』
「ま、おいおいだろそこらへん」
するとどしんっとした足音が聞こえてギギギッと首が音を立てるくらいにぎこちなく振り向く。
『ガッガッガッ!!!さぁブレイバーンッ!私と激しく破茶滅茶で無茶苦茶な遊びをしようじゃありませんかぁ!!』
『だずげでぇぇ!!!ブレイバーンお願いよォ!!、バッドがわりにざれる!!!!!!』
ピチピチと暴れまくってるヴァニタスを担ぎ上げている等身のクピリダスがいた。
どうしよう、ヴァニタス体型が体型なせいで獲れたての魚が暴れてる様にしか見えない。
「いやなんでヴァニタスと」
『え?ちょうどいいからですよ。サイズが』
『イサミ!!もっと言ってやって頂戴ッ!!コイツアタクシの事冷凍カジキかなんかと勘違いしてんのォ!!』
『大体一緒でしょう』
『ちげぇだろうがよッ!!節穴かオメーのセンサー!!!』
「大体遊ぶって何すんだよ」
『野球です』
『ボールは……?』
『ペシミズムです』
「ペシミズムぅうー!!?見ないと思ったら!!」
2mボディのペシミズムがちょこんとクピリダスの手のひらに収まっていた。
『かなしい…ボールにされてしまった…、どうか助けてくれ…』
『何してるんだクピリダス?!いや本当に何してるんだ?!』
『え、親睦深めるにはスポーツだと聞きましたので!』
「仲間を道具として使うのは違うぞ!!!!」
『え?ボールとかは友達って言うからてっきり…』
「違う違う!!そう言う意味じゃない!!」
『そうだそうだ!!全然違う!戻してこい!!道具なら作るから!』
『ぶー…ほらお家に帰るんですよ』
『野生動物かなにかかアタクシ達は!??いい加減になさいよ?!オメーマジでよォッ!!アタクシをなんだと思ってやがるッ!魚じゃねーーんだぞ!!?』
『おぉ…嘆かわしい…ペシミズムをまるで小石の様に扱うとは…なんと粗雑な…』
『あーもう!ここで騒ぐんじゃない!どっちしろ一旦出ていってくれ!また後日改めてやれる!就寝時間だって近いんだ夜勤当番以外は戻ってスリープ!』
『はぁーい』
『んもうっ!行くわよーペシミズム。あらアンタこのサイズだと持ちやすいわね』
『うむ、これは移動が楽であるな。これからよろしく頼むぞヴァニタス』
『投げるわよおバカ』
『なんと…ヴァニタスはケチである…ケチ…』
『せっかくペシミズムの霧を使った魔球投法ができると思ったのですが残念です…』
「何しようとしてんだ…やめろやめろ」
『ぶー…ケチですね…』
『クピリダスも早くもーどーれー!』
『分かりましたよー、おやすみなさい2人とも。あまり夜更かしはダメですよ』
「俺もすぐ戻るから大丈夫だよ」
頷きで返されてクピリダスが部屋に後にする。
なんだかどっと疲れた。
かと言って部屋に戻る気力がないし何より眠すぎ。
『イサミ?部屋まで送ろうか?』
「んー?ん、いや平気だ」
するとズボンが突っ張る様な感触がして下を見るとミニクーヌスがおり眠気で正常な判断ができないせいか思わず抱き上げてしまった。
『なぜ抱き上げられたのだ…?』
「んぇ…?んー…ん…」
『まぁいい、イサミよ。サタケとやらがお前を呼んでいたぞ。明日の演習についてだそうだ』
「ん、わざわざありがとな。一緒に行くか」
『眠たいのか?起きるのだイサミ』
「んー…起きてる起きてる…大丈夫大丈夫…」
『ならば私が代わりに出よう。イサミは休むといい。構わないか?クーヌス』
『大丈夫であろう、ならば私はイサミを送っていく。廊下で寝られてしまっては困るからな。ほらイサミ行くぞ起きるのだ』
「悪いなブレイバーン…頼む」
ぺちぺちとクーヌスに頬を突かれ意識を保ちながら自室へ戻る。
ボスっとベッドへ倒れ込むとぴょこっと白い塊が飛び跳ねた。
『それでは私はルイスの元へ戻る。きちんとお布団をかけてあったかくして寝るのだぞイサミ』
「ー…あんがと…」
ポテポテと足音を立てながらクーユスが部屋から出ていく。ドアも閉めてくれた様でがぢゃんと重い音がした。
雑に靴とツナギを脱ぐ。ずりずりとイモムシみたいに動いて雑に掛け布団をかけるとむにっと柔らかい感触がする。
するとそこには簡易ボディのブレイバーンがいた。
だが目は光っておらずただのぬいぐるみの様になっていてなんとなくそれを抱えそのまま眠りについた。