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    kanamisaniwa

    pixivメインに二次創作(刀剣乱舞、ツイステ、グラブル、FGO等)やってます。超雑食でオリキャラ大好き病を患う腐女子です。ポイピクにはかきかけだったりネタだけの文章を投げたいです。

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    kanamisaniwa

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    デアアイ600年後√(子孫と再構築)、友情出演ヤチマ

    #デアアイ
    deer-eye
    #アラヤチ
    arayachi

    月の侵攻は、600年前よりも苛烈だった。
    月側は600年前のディアスポラ撃破をインシデントとし、少数精鋭での各島毎の殲滅に舵を切った。
    そのため、月の侵攻を空の民が認識したと同時に小さいが島が一つ落ち、翌日にはそのとなりの中規模の島に先行部隊のω3が侵攻。あっという間に空の民達を駆逐していった。
    だが、月側にもトラブルがないわけではなかった。

    (侵攻は計画より47%遅延。不確定要素を計算にいれても遅れすぎている。先代ω3ヤチマの離反だけでは理由として不十分だ)

    ω3の中でも戦闘に特化した最強の戦士であるデアンは、そんなことを思考しながら目の前に躍り出てきた空の民を一なぎにする。
    骨が砕ける音、悲鳴、逃げ惑う声、破壊音。
    そのどれもがデアンの興味をひくものではない。ただアドレナリン消費の足しになるだけだ。
    やがてあらかた砕きつくし周囲が静まり返ったときだった。
    かたり、とわずかに聞こえた物音、ω3のなかでも戦闘特化であるがゆえに拾えた音をデアンはたどった。
    慌てていたのか乱雑に隠された地下室への扉を蹴り破る。短い階段を降りたさきにいたのは、ひょろりと細い男だった。

    「まだ居たか」
    「ひっ…つ、月の奴か?!そんな、ここが見つかるなんて…!じゃあ表の自警団達は…」

    男は後ずさって壁に背中を打ち付け、しかしやけくそ気味にデアンに向かって叫んだ。

    「くそっ!空の民が月に何をしたって言うんだ…!勝手に脅威だとラベリングして勝手に襲ってきて!なんなんだよ!元々あんなに距離が離れてるんだ、お互い干渉せずにいればいいだけじゃないか!たまに来る旅行者になら道案内くらいはすし、困ってるなら助けるけどさ!!」

    感情のまま叫ぶ男の言葉は支離滅裂だった。
    前半はともかく、現在進行形で敵対関係にあるはずが旅行者であれば道案内しあげく助けるなどと言っている。
    しかし、デアンにはそんなことよりも気になることがあった。

    「妙だ…アドレナリンの生成に変化がある。この部屋になにか細工がしてあるのか?」
    「……は?え、アドレナリン?そんな神経物質を操作できるような仕掛けなんてないよ…!」
    「ならば何故だ?圧倒的に劣る空の民の能力で俺の内部構造に干渉できるなど、セントラルアクシズの想定外だ」

    デアンは部屋中を視覚スキャンで観察するが、装置らしきものはまったくない。
    だが、明らかに男が叫び出したあたりから普段余ってしかたがないアドレナリンが多少抑制されていた。
    一方、男の方が何かに気づいた顔をした。

    「そんな事いわれても…!待てよ、月の戦士…アドレナリン…まさか君は"デアン"かい?!」
    「…何故俺の呼称コードを知っている。回答次第では緊急対応を行う必要がある」
    「うわわわっ…!待って、たんま!知ってたんじゃない、聞いたことがあるんだ!僕の家に伝わる、ご先祖様の冒険物語に出てくる恩人の名前だよ!」

    動くけど頼むから撃たないでくれよ!と男はデアンに懇願し、ごそごそと足元に投げ出されていたバックパックから握りこぶしより一回り小さいくらいの箱を取り出た。
    そしてデアンに向かって放り投げた。
    難なくキャッチしたデアンは、それを見て無感動に言った。

    「音声記録媒体か。技術レベルが酷く稚拙だ」
    「悪かったね!それでも600年間記録を保持するためにメンテナンスしたりどうしようもなくなったらコピーを新しい媒体に乗せ変えたり大変だったんだ!ともかく、聞いてみてくれよ。御先祖様がこれを残したかったデアンが君なら、なにか、伝わるものがあるはずだから」

    男の整合性がとれない言葉をデアンは理解不要と切り捨てつつ…しかしどうにも耳に残る声と、多少の好奇心から音声再生のボタンを押した。
    そこから聞こえてきたのは、記憶領域に付箋をつけて保存していたある"声"と瓜二つだった。

    『やぁ、デアン。久しぶり、といっていいのかな。この音声を君が聞いている頃には僕は墓の下だろうし、再構築された君が僕のことを覚えている可能性はとても低いだろうね。でも、かつての君が、僕の言葉の一つだけでも"付箋"を貼っていてくれたら…奇跡は起こるかもしれない。そんな不確実なモノに期待なんかして、君は呆れて、いや、理解不能って言いそうだ。
    ちなみに、君にこの音声記録を渡したのは僕の子孫、正確には僕の妹グウィンが生んだ子供達のさらに子孫にあたるんだ…途中で途絶えてなければ、多分。僕自身は結局独り身でね、理由があった訳じゃ…いや、あったかな。グレイスに食べさせられた幽世の物質だとか月や大気圏で浴びた紫外線その他諸々、あ、一瞬だけど分解槽にも浸かっちゃったし…直接子孫を残すにはちょっと体に不安があってね。僕じゃなく、子供達やその子孫に悪影響が出たら後悔してもしきれない…。まあ、それはともかく、僕の遠い遠い血縁の子供なんだ。ちょっとだけでも僕に似てるかな?出来れば、声が似てくれていればいいんだけど。僕の声は君のアドレナリンの抑制効果があったみたいだからね。

    さて、あまり時間もないし、本題を、僕がこの音声記録を残した理由を話すよ。
    僕は君に、伝えたいことがあるんだ。

    僕が月にいたあの長いようで短い間、僕は君に、というかω3に怯えるばかりで殆んどろくに話が出来ていなかったね。オリジナルのカシウスを無事に空の世界に帰すことだけに必死になって中枢とω3を騙さなきゃいけなかったから。どうやって誤魔化そうはぐらかそうと考えるばかりで…でも、君との会話は他の二人とは少し違ったんだ。
    噛み合わないことは多かったけど、実を言うと少しその噛み合わなさが楽しかったんだ。
    それに君は色々限界だった僕を気遣ってくれた…それは君にとっては対フォッシル用ストレス計算から導き出した最適行動でしかなかったとしても、僕にとっては優しくしてもらったことは本当だった。
    僕はあの月で、唯一君だけを特別に感じていた。
    もっとも、それを自覚できたのは全部終わった後だった。僕が知るデアンが"敵"の武器で細胞レベルで分解されてしまった後、何も伝えることが出来なくなってしまってから…。
    空の民の言葉はうまく出来ているとつくづく思うよ。後から悔いるから、"後悔"。
    でも、月に残った相棒が教えてくれた。中枢は600年後にω3を再構築するーーデアン、君が生まれてくる、と。
    こんな言い方をすると酷く感傷的だし今の再構築された君には迷惑な話なだけかも知れない。僕のエゴイズムだと指摘されれば反論はないよ。
    でも、それでも、伝えたいことがあるんだ。

    デアン、僕は君と…デアンと友達になりたかったよ。

    ここまで聞いてくれてありがとう。この音声記録は破壊してくれて構わない。
    でも、もし、可能なら…この音声記録を渡した僕の子孫達は見逃してあげてほしいな。きっと、月から攻めてきた君たちを見て怯えている中で、勇気を振り絞って渡してくれたはずだから…。
    ああ、もう容量が一杯だ。僕は話し方が下手だなぁ。でも、最後に。
    月では話し相手になってくれて、気遣ってくれてありがとう、デアン。
    600年後の空と月の世界がどうなっているかわからないけれど、君が幸せであることを祈るよ』

    ぷつ。と音がして、再生が終わった。
    しばらくその場に沈黙が落ちる。
    やがて先に口を開いたのはデアンだった。

    「行け。今は追わん」
    「え?」
    「お前が背にしている隠し扉の先、奥の小さな気配も含め、今は追わん。」
    「!ありがとう、デアン!」

    デアンの言葉を確かに聞いた男は、即座にバッグパックを拾うと、壁に見せかけた仕掛け扉を開いて飛び込んでいった。
    仕掛け扉の向こう側から、おじさん!早く逃げるんだ!隠してある騎空艇に!と小さな複数の足音とともに男が去っていく音がする。
    デアンは宣言の通り、追わなかった。
    追うだけの気力がなかった。と言っても良いかもしれない。

    「このノイズは、何だ?」

    デアンは片手で額を押さえながら呻いた。
    音声記録媒体から流れた声を聞いてから、デアンの思考は混乱していた。
    その声の主が誰かはすぐに判断できた。
    アイザック。
    今のデアンの一代前の時代に月に帰還した月の民の子孫であり、短い時間だったがデアンと言葉を交わした男。再構築された今のデアンの記憶領域には、彼と過ごした時間や彼の言葉が付箋でもってラベリングされ保存されていた。
    その事実は明白なのに、詳細不明のエラーが複数吐き出されるかのような、いや、プログラム自身に影響をあたえるような気持ち悪さを感じた。
    こんなことははじめてで戸惑うデアンの背中側から不意に声がかけられた。

    「それはノイズ(雑音)じゃない。変化と言うんだ」

    はっと気がつきデアンが振り向いた先には、赤い髪の少女が立っていた。
    デアンは彼女のことを記録、記憶両方で知っていた。空の世界の侵攻作戦直前、月の戦士であるはずなのに『家出する』と謎の言葉を残して月から空へと離反した前ω3ヤチマだった。

    「空の世界は不思議。関わる程に己が変化していく。私達は最初から用途別に完璧にデザインされているから変化なんて想定されていないのに、有り得ないはずのことがおこる。エージェントカシウスの記録は持ってるでしょ?彼こそ最もその変化を受け入れた月の戦士だった。だからこそ中枢の予想を超えたスペックを引き出し空の世界の側につくに至った。600年を超えて今も、彼は空の世界とそこにいきる民達とともに戦っている。月側の侵攻計画の遅れはそれが一因」
    「空の世界との接触による変化…お前もそうか?先代ω3ヤチマ」
    「私は、彼程には変化を受け入れられなかった。空の世界にいても月に帰ることばかり考えていて…そのせいで一番大事な友達を傷つけてしまった。
    アラン、私の一番の友達。私の願いを叶えるために脳を自ら摘出して機神に繋いで…最期は同族の空の民達に機神ごと壊されてしまった。
    カシウスを観察した今だから思う。もっとはやく私が変わっていたら、月に帰ることに執着せずに空の世界でアランと一緒に生きていくことを選んでいたら…アランはもっと良い人生を生きられたのかもしれない。私の願いを叶えるためにアラン達が作ってくれた"組織"も、あんな風に腐って沢山の人達を不幸にすることもなかったのかもしれない。私は変化を受け入れきれずに失敗ばかりしてしまった…だから、その失敗から学んで変化することにした。昔の私ならおうち(月)から家出なんて出来なかった。でも、今なら出来たし後悔もしてない」

    ヤチマの表情は晴れ晴れとしていた。
    デアンが保持する記録を参照した限りでは、ヤチマは空の世界に送られた月の民のなかでもっとも強く帰還を望んだ存在だった。子孫に望みを託さず機神を取り込み無理矢理寿命を伸ばしてまで。
    そのヤチマが、自ら『家出』すなわち月を離れたのだと言うのは、純粋な驚きをデアンにもたらした。

    「変化は一見ノイズのように煩わしいけれど、それを超えてあまりあるほど魅力がある。だから私もカシウスも変わった。貴方もそうでしょう?デアン。貴方の記憶領域にある"どうしても剥がせない付箋"がその証左。貴方の変化のきっかけ。本当は600年前すでに変わっていたのにそれをノイズだと思い込みたくて薬を投与してまで闘争本能を引きずり出してアドレナリンで誤魔化して…"失敗"したでしょう」
    「失敗?」
    「後悔、と言っても良い。アドレナリン全消費まで戦って満足して壊れることが貴方の本当の望みなら、その記憶の付箋は消えてるはず。それなのに中枢が貴方を再構築する時ですら消すことは出来ないほど強固に付箋は貼られたままだった。なら、その付箋の意味は?」

    ヤチマは月の民独特の淡々とした口調で論理を積み上げる。その積み上げる内容は月のルールとは相容れないというのに。
    そして、デアンが出した結論もまた、本来の在り方とは"変化"したものだった。

    「そうだな…俺は彼と、アイザックともっと話したかった。あの声をもっと聞いていたかった。…だがもはや叶わぬ望み、俺の失敗か」

    デアンは認めた。
    己の変化を。
    そして、それをもたらしたアイザックとの一時を肯定した。
    そしてそんなデアンの変化を喜ぶような声色で別の男の声がした。

    「そう悲観することもあるまい。600年の時を経てお前にアイザックの声が届いた。それだけで相棒には十分だろう。それに、アイザックと団長達が守った空の世界は続き、子孫達も残っているしな」
    「?なんだ、ヤチマではないな」

    突然聞こえた第三者の声にデアンが不審に思っていると、ヤチマがやたら嬉しそうに自分の頭についている何かを指差して言った。

    「そう、彼はアラン。本当はアランドゥーズ。私の一番の友達」
    「レイベリィと呼ぶ者もいた。アイザックからは相棒とも呼ばれていたな」
    「あのときのジャンクパーツか?なぜヤチマの頭部に」
    「機会があれば話すとしよう。ヤチマ、そろそろ行かないとカシウスとの合流に遅れてしまう」
    「わかった。……一緒にくる?」

    ヤチマはデアンを見上げながら尋ねた。
    それは一言だが、すさまじく重い問いかけだった。
    月から中枢から離れ、空の世界に与するか、と。
    かつて目をそらした変化を受け入れるか、と。
    だが、デアンは迷わなかった。

    「行こう」

    返事とともに耳に装着していた装置、中枢や他のω3との連絡機器を外し掌で砕く。
    デアンの握力で簡単に砕けたそれを地面に捨てたのを見たヤチマは、にこっと笑って先を歩き出す。
    デアンはそれに続きながら、逆の手に持っていた音声記録媒体をウエストバッグに大切にしまった。
    600年の時を超えて、子孫達が繋いでくれた、デアンにとって唯一の"友達"の思いを、得難いそれを大切にする決意とともに。

    END

    四章でデアンの最期に新鮮な悲鳴をあげたデアアイ民ですはじめまして…(まだ泣いてる)
    せめて、せめてなんとかしてデアアイををををを!!!!と、エクストラストーリーのレイベリィからの報告をこねくりまわしてこうなりました…。
    いや、1~3章であれだけ!!あれだけにおわせしておいてあっさり組織メンバーに撃破されて(いや、バザラガとイルザのめっちゃ見せ場でしたけども!!)アイザックに会わずに終わるとかまじかよぉぉぉっ!!ってなっしまった。
    なので、せめて、せめて裏で変化はあったんだよと思いたかった。ただ、デアンはカシウスと違ってアイザックと過ごした時間があまりにも短くてアイザック側のストレスもやばくて、そういう諸々の要因のせいで変化を受け入れられなかったのかなと。その結果が薬を使ってでも月の戦士としてあるべき姿で戦い続けることだったんじゃないかと。

    で、600年後しのアイザックからのプロポーズ(違)届いて味方になってもええやん!!!となりました!!(勢い大事)
    ちなみに音声記録渡してくれた子孫くんは、声は似てたけど見た目ぜんっぜん似てません。なのでデアンもわからなかったと。この後もくっついたりはしないかな。あくまでデアアイなので!!(デアンは再構築体だけどほぼ≒とします←)
    友情出演のヤチマ&アランドゥーズ(レイベリィ)も大大大好きなので私の個人的解釈で出てもらいました!!!
    デアアイ民の同士のみなさん…一緒に幻覚見ながら強く生きましょうね…(まだ泣いてる)
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    kanamisaniwa

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    三ヶ月後。
    アズール先輩からの提案で参加を申請したアジーム家雇用希望者の選抜試験当日、私はジャミル先輩、エリムさん、そして面白がってついてきたフロイド先輩(本当は諸々ド素人の私を心配してついてきてくれたのをちゃんと知ってる)と一緒に熱砂の国にあるアジーム家所有の別荘の隣に設置された試験会場控えにいた。
    エリムさん曰く、アジーム家所有の不動産の中では中規模ながら市街から遠くて使い勝手が悪く最低限の手入れしかしていなかった別荘で、確かに選抜試験をするには丁度良い物件だとか。なんなら爆発させても大丈夫ですよ、と言ったエリムさんの顔はわりとまじだった。
    そしてその別荘の隣に建てられた仮設の集合場所兼待機場所で簡単な説明を受けた。といっても事前にアズール先輩が収集してくれていた情報と内容はほぼ同じで、あえて追記するなら試験会場である別荘のあちこちにライブカメラもとい監視カメラが設置されていて、その映像はリアルタイム公開されるので別荘内の様子はもとより他の参加者の様子を逐次確認できること、そして本当に魔法でもなんでも使用可、建物への損害も免責するから全力で目標を破壊してみろ、という言葉が説明担当からあったことくらい。
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