こいつにこのトリガーはダメです。会議室へ向かう途中、壁の空気ダクトから何やら動くものが見えて、引っ張ってみたら、手のひらより少し大きいぬいぐるみで。
なんでこんなところに…としげしげと眺めていたら、コイツ太刀川に似てる気がすると思った瞬間ぴょこぴょこ動き出して、思わず壁に叩きつけてしまった。
「いてぇ」
「!? 喋った」
「その声は、二宮か。いやー助かったぜ。一時はどうなるかと思った」
「…どういう状況だ」
「その前に逆さなんで反対にしてもらえると嬉しいな〜」
俺が持っているのは、足。宙吊りは流石に可哀想か…とりあえず反対にして抱き抱える。
でもこの状態を他の奴らに見られると面倒なので、近くの空き部屋へ。
「説明しろ」
まあるいフォルムは子供がいたら喜んでぶん回しそうだが、あいにくここに子供はいない。
「あーなんだっけ。隠密行動に特化してトリオン体を小型化にしたらどれくらい動けるか、ていう実験で、色々隙間を探索してたら」
「ハマって動けなくなった、と」
「あたり〜」
なんてアホな理由であそこにハマるとは。
「俺が通らなかったら、どうする気だった」
「まぁ気長に待とうかと。実際二宮、気づいてくれたし」
「っ、おい何処触ってやがる」
「お、ここも隙間だな〜」
うごうご腕の中で動いたかと思ったら、ジャケットの中に侵入されて、くすぐったい。思わずよろけて尻餅をつく。
「おいっ、やめろ」
「真っ暗だ〜」
「ふ……っ…こっの、」
「ぷぎゃ」
ジャケット越しにぎゅっっと握ると、悲鳴が聞こえて、慌てて手を離す。
ぬいぐるみのように柔らかいので、潰してしまったら夢見が悪そうだ。
だがこちらの心配をよそにまた動き出した太刀川は段々下の方へ這っていき、ズボンのベルトに手をかけてきた。
「お、い……っ」
「お、ここなんかありそーだな」
ふみっとズボン越しにニヤニヤと触れてきた瞬間、思いっきり太刀川をはたき落とした。
「ぎゃんっっ」
「はぁはぁ、………開発室いくぞ」
有無を言わさず、ガシッと掴んで、開発室に突き出す二宮であった。
後日、いたずら心が芽生えた太刀川は仮眠室で寝ている二宮にぬい姿でイタズラしたとかしないとか。
了