とある探偵の幕間『春彦ー、お前飯食ってないだろ。それにその目の下の隈。睡眠時間も摂ってないのかー?』
「………………」
うざったい声が聞こえる。
『3食きっちり、とは言わねぇけどさ。ちゃんと栄養摂らないと、ただでさえひょろいのに倒れちまうぞ』
「………………」
お節介で、能天気で、お人好し。僕が返事をしようがしまいが変わらずに垂れ流されるそれが。
今の僕にはひどく癇に障った。
『とりあえず夕飯作ってやるから、何が――』
「煩いッ!!」
耳障りな音を立てて、投げつけたマグカップが壁にぶつかって粉微塵になる。重力に従ってぱらぱらと落ちていくそれを見ながら、僕は頭を掻きむしった。
事務所はひどい有様だった。散らばったまま埃を被っている書類、水に浸かったままの食器、薄暗い室内。
1806