Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    u_i_p_

    @u_i_p_

    人を選びそうなものをポイポイ致す

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💙 😘 👀 👏
    POIPOI 29

    u_i_p_

    ☆quiet follow

    両片思いのちょぎさにが想いを伝えられないまま別れの時が来てしまう話。独自設定強めです。

    #ちょぎさに
    inTheMannerOf...

    色を失くした青色にさよならを時折、霊力に「色」を持つ人間がいるという。
    そしてこの本丸は、「青」の霊力を持つ、青い審神者が居る。黒に冷たい青の映えるバイカラーの髪に、真夜中をミルクで溶いたような青い瞳。
    審神者の霊力の影響により花々が青くなり、その外観から「青の本丸」と呼ばれている。
    この時期は、深い瑠璃色の椿が咲いている。
    椿に限らず、空色の桜、露草色の藤、濃藍の彼岸花、四季折々の美しい青が咲く。

    近侍である山姥切長義は監査官としてこの本丸にやって来た。
    政府にいた頃、兼ねてより噂に聞いていたというが、実際の青の美しさには心奪われたという。


    審神者が意識を無くして1週間が経った。
    ある日、糸が切れたように、眠るように意識を失った。
    瑠璃色だった椿は白くなっている。審神者が眠っている為、霊力の干渉を受けなくなってしまったのか。
    「この本丸で白い椿を見ることになるとはね」
    山姥切長義は、主の色であり自分の瞳と同じ色である瑠璃色の椿が好きだった。
    「椿が白いのは普通のことだ」
    山姥切長義とよく似た整った顔の男が言う。
    この「青の本丸」の初期刀、山姥切国広だ。
    「もとはどこにでもある普通の本丸だった。青い椿なんて咲かなかった。お前がこの本丸に来た年の冬、急に花が青く色付いたんだ」
    「俺にとっては、この本丸に白い椿が咲くことが異様に見えてしまってね。美しい青を失ったこの本丸なんて、……」
    「青」を失った本丸。
    少し縁起の悪いことを口走ってしまった気がして口を噤む。


    審神者が意識を無くしたまま2週間が経った。

    「山姥切長義、時の政府からの電報だ」
    態度は大きいが、体格は小さな黒い管狐がやって来て、政府からの電報とやらを表示する。

    -----------------------------

    通達

    本丸番号XXXXに於いて、審神者の霊力の消失を確認。
    時の政府は、現審神者による本丸の存続は不可能と判断。
    上記理由により、現審神者を解任。

    審神者は政府の療養施設にて保護、意識及び状態の回復ののち正式に審神者の任を解くとする。

    また、本丸は解体とせず、後任審神者により任務継続のため存続とする。
    後任の審神者については近日中に選定し、改めて通達する。

    以上。

    -----------------------------

    霊力の消失。審神者の解任。上手く飲み込めない。

    山姥切長義が来た年に、急に青く色付いた霊力。その青色に呼ばれてこの本丸にやって来たと、そんな風にさえ思っていたのに。美しい青色に惹かれて、愛しくて、大切にしたかったのに。
    触れずに一歩引いて見つめてた美しいものは、手の届かないところで崩れ落ちていく。
    伝えたかった言葉の数々が込み上げてくる。

    心にぽっかりと穴が空いて、美しかった記憶が色褪せていく。空色の桜も、露草色の藤も、濃藍の彼岸花も、だんだんと思い出せなくなっていく。幻のように消えていく。
    彼の高慢な輝きさえ、色を失っていく。


    あれからおよそ1ヶ月が経った。桜の季節になった。桜は普通の淡い桃色だ。
    政府の療養施設にて療養を受けていた審神者は、意識も戻り、幾分か普通に過ごせるようになったという。
    そんな審神者が、今日、別れの挨拶のためにやって来る。
    ようやく落ち着きを取り戻した心を、どうして逆に乱しに来るのだろう。
    山姥切長義はそんな風にさえ感じた。

    「ご無沙汰だな、山姥切長義」
    淡々とした声。審神者のものだ。
    しかし、そこにいた人は、黒い髪に黒い瞳。霊力を失い、その姿からも青を失っていた。かつて愛した「青い人」はいなかった。
    けれど。

    青を失っても尚、美しく、愛おしく感じた。

    「感謝と別れを伝えに来た。……最後くらいは自分のありのままの言葉で伝えよう。いつも傍に居てくれてありがとう。美しいあなたのこと、気に入ってたよ」
    話しすぎると名残惜しくなるから、と、早々と言葉を切り上げ、忘れないよと手を振り、遠くなっていく。

    ああ、思い出した。

    色褪せた記憶と心が鮮やかに色を取り戻していく。美しかった青い記憶。
    例え、その人が色を失っても、記憶は鮮やかなままだ。最後に会えて良かった。そう思った。

    山姥切長義は後から知ったが、黒い髪に黒い瞳、それが審神者の本来の姿であった。
    花が青く色付くようになった年に、霊力とともに外見に変化が現れたとのこと。
    最後に見たその人のそれは、ありのままの姿だった。


    かつて愛した人、いや、愛している人への気持ちが溢れ、瑠璃色の瞳が濡れ、足元さえ濡らしていく。
    去っていく真夜中の瞳も雨を降らす。


    空色の桜も、青い審神者の姿も無くなってしまった。青いのは、雲ひとつ無い空だけ。
    いや。そこにはかつての審神者が愛した青があった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏🙏😭👏👏💖👏💴💯👏👏👏🙏🙏🙏😍😭😭💯👏💮💮💮😭🙏💞💕💯💯🌋
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works