バレンタイン2024手作りチョコを渡したい。前世日本人であるプライドの中に、ひっそりと息づいている小さな野望だ。
けれど、その小さな野望は、プライドにとってはとてつもなく大きな試練でもあった。なぜなら、ラスボスの逆チートによって、料理や刺繍といった家庭科に連なるスキルが壊滅的レベルに補正されてしまうから。手順や注意事項は理解出来ているのに、手元が勝手に期待と真逆の結果を生み出してしまう。必然的に引き起こされる事故を回避するには、ティアラの助けを借りるしかない。
そう、借りるのが正解だ。ティアラに手伝ってもらえば、上手に、しかも美味しくできると実証されている。安全安心間違いなし。
よし、そうだ、そうしよう、と腰を上げかけ、けれど結局手伝って欲しいと口にできずに終わってしまう。
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